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つぼの「突きどころ」を知る作家〜有川浩さん〜 おすすめ「阪急電車」

読み手の「つぼ」を知る作家〜有川浩さん〜

 私が有川さんの作品を実際に手にとってのは6年ほど前でしょうか…

 「阪急電車」という映画があったのは知っており(見てはいませんでしたが…もし見ていたら手に取らなかったと思います。理由は後述),何気なく読み始めたのが運の尽き。その後,有川さんの作品,一気読みでした!

 

 有川さんの書く文章は,非常に分かりやすく簡潔です。

 しかし,それは単純な文章ということではありません。読み手の心に抵抗なく染み渡っていき,しかも作者の伝えたいことがダイレクトに,しかも深く伝わってくる。これって,非常に高度な技術だと思うのです。

 

 有川さんの作品の登場人物は,非常に感情が豊かです。頑固だったり,優柔不断だったり,ときには周囲との壁を作ったりしているのですが,自分の考えをしっかりともっていますし,喜怒哀楽を素直に表現します。

 その登場人物の感情の起伏を,有川さんの素直な文体が最大限に生かしているからこそ,非常に読みやすい作品に仕上がっているのではないでしょうか。

 

電車内の人間関係の機微を描く「阪急電車

 そんな中で最もおすすめしたいのが,「阪急電車」です。

 私にとって,最初に読む有川作品としてこの「阪急電車」を選んだことは非常に幸運でした。

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 本作は,阪急電車に乗る何人(組)かの乗客にスポットを当て,路線一往復間の中で起きる様々な事象から新たな転機を迎えることになる彼らの成長を見届ける作品となっています。

 作品の構成上「うまいっ」とうなるのは,

①往路ではそれぞれの乗客の抱える問題点を浮き彫りにし,復路で希望あふれる結末を描くという,「一本道の路線」というシチュエーションを生かした作品づくりをしている。

②主人公的な扱いの「翔子」という存在はあるものの,登場人物それぞれが,それぞれの課題を解決するためのトリガーになるように関わり合っている。

というトリガーを用意していることです。

 

映画は見ないで読むだけにした方が…

 実際の作品を読んでから,映画を見る機会がありました。

 15分ほどであきらめました。あんなに魅力的な俳優さんをキャスティングしているのに,どうしたらこんなにつまらなくできるのかというほどの駄作に仕上がってしまっています。有川さんの文章の魅力を,映像化するのは確かに難しいのかもしれませんね。

(その点,「図書館戦争」はがんばっていたと思いますし,TVドラマですが「空飛ぶ広報室」は,原作を超えるほどの秀作でしたから,やはり制作側の読解力の問題かな?)

 

 私も,映画を先に見ていたら,本は絶対に手に取ることはなかったと断言できるほど…これだから原作ものは恐ろしいです。

 

有川さんの守備範囲の広さが分かる秀作

 有川さんといえば,自衛隊三部作図書館戦争等,いわゆる「ベタ甘」もので知られていますが(もちろんこれらもただ単に甘いだけでなく,読み応えがあるものです),この「阪急電車」は中庸的な読み味です。

 すべての作品を読み終わってから考えると,有川作品の中にあっては独特な作品群の中に入ると言えるでしょう。強いていえば「レインツリーの国」と同じカテゴリーでしょうか?

 

 しかし,中庸的な読み味だからこそ,有川さんの筆力,守備範囲の広さを確認できる作品と言えるのではと考えています。

 

 私のようなおやじが「有川さんか〜」と二の足を踏んでいるようであれば,この「阪急電車」から始めてみてはいかがでしょうか? 

 

 おすすめです。

 

 

 

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