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読了 三上 延「ビブリア古書堂の事件手帖7〜栞子さんと果てない舞台〜」

ついに一応のエンディングを迎えました

 前作「栞子さんと巡るさだめ」から2年2ヶ月…ついにビブリアも,一応のエンディングを迎えました。

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 村上春樹さんの「騎士団長殺し」をじっくりと読んでいたことや,仕事の関係でなかなか読書の時間を確保できなかったこともあり,この連休までずれ込んでしまいました。迷ったんですよね…「騎士団長殺し」or「ビブリア」…どっちを先に読むか…

 

 読了後の素直な感想は…

「いや〜,よかった! よかったね,栞子さん,大輔君!」

といった感じ。満足感からか,登場人物に感情移入している自分がいました。

 

正に大団円! 謎の解明,心のつながり…

 本シリーズは,ご存じの通り,本に関わるミステリーを若き古書店の店主「篠川栞子さん」が解いていくことでストーリーが展開していきます。

 しかし,「本筋」としては,

①主人公の栞子さんと母親である「篠川智恵子」との確執

②パートナーとなる「五浦大輔」との関係性

という二本の柱を中心にしています。ミステリーでありながら親子の情を問う物語であり,恋愛小説でもあるのです。

 

 これまでのシリーズで謎として描かれていた母「智恵子」の事情や思惑がついに明らかになり,このこと自体が7冊目のミステリーの肝となります。

 「本に取り憑かれた母」に対する「自分はそうならない。でも,そうなってしまうかもしれない…」という栞子さんの「揺らぎ」が,栞子さんの人間性を描く上で重要な鍵になっていたのですが,

「まあ,破綻なく最後までよく描ききったな。」

といった感じです。前向きなエンディングでとてもいい気分を味わえました。

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 また,これまで徐々に深まりを見せてきた栞子さんと大輔君との関係も,納得の結果に。しかも,栞子さんの抱える闇の部分を承知しながら,それさえも包み込もうとする大輔君の度量の広さと,そんな大輔君の思いを汲んだ上で思いを受け入れようとした栞子さんの結び付きの深まりに心が暖まりました。

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 恋愛に奥手として描かれていた栞子さんが心を開いていく姿が実に爽やかでした。

 互いの心がしっかりと結び付いていく様子が,「シェークスピアの謎」という今回のミステリーを解く過程でしっかりと,しかも力強く描かれており,三上さんの筆力が上がっていることを感じさせられます。

 

 シリーズ中で最も完成度の高い作品になっていると考えます。

 

オールキャスト総出演! これまでのシリーズを読んでからどうぞ

 まあ,一応の最終巻ということで,お約束の通りにこれまでのシリーズを彩ったキャストが総出演です。登場するごとに短く説明はしてくれているのですが,もちろん読んだことがない方は,どんな事情でどのように栞子さん達と関わったのかは分かりませんし,ストーリーが進む上で少なからずストレスになるような描かれ方をしています。

 これまでのシリーズを読んだことはない方は是非とも1作目から順番に読んでいくことをお薦めします。

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 という私も,すっかりと忘れてしまっていた人物がいたり,

「どの巻の,何の本に関する人物だっけ?」

としばし立ち止まってしまう場面も多かったです。しかし,そのことが,

「もう一度1巻から読み直してみようかな…」

という気にさせてくれました。近いうちにもう一度栞子さんと大輔君の道筋を追ってみようと思っています。

 

 

でもでも,これで終わりじゃない?

 「これで一応のエンディング…」

と書いてきました。読み終わった後,三上さんの後書きを見てびっくり。

「紙数の関係で本編に盛りこめなかった話,大輔視点という物語上の制約で語れなかった話,それぞれの登場人物達の前日譚や後日譚をかなり考えていて…」

という三上さんの言葉。さらに,

「番外編やスピンオフといった形で『ビブリア』はまだ続きます。」

という明確な続編についての話まで。

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 これは朗報ですね。

 「一応の」最終作まで,2年以上の時間を掛けて下調べを行ってきた三上さん。後付けの「参考文献欄」には,なんと43冊もの参考文献が列挙されていました。それだけこの作品に心血を注いでいたということでしょう。

 「ビブリア」をそれだけ愛し,大切に考えている三上さんのこと。きっとこれからの続編も大切に仕上げてくれることでしょう。

 これからも読者が,栞子さんや大輔君などを通して「どきどき」「ほっこり」出来るような作品を期待しています。…今度は2年も待たせないでね!

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