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筏かつら「君に恋をしただけじゃ、何も変わらないはずだった」〜「読み応え感」大幅増量の良作!〜

作者の成長を感じられるのって心地いい

 私,割と節操なく「読みたい」と思う本を手に取るタイプでして,オヤジではありますが「ラノベ」というカテゴリーでくくられている作品も読んだりします。

 しかし,そもそも「くくり」って意味があるのでしょうかね?
 一般的に「ラノベ」というと若者向きに寄せられたテーマや書きぶりになるのでしょうが,オヤジが読んでも楽しめるものは数多く存在します。

 また,一般的な「ラノベ」の範疇からはみ出して,「無国籍」ともいえる書き味が魅力だったりする作品も多いですよね。

 個人的には「住野よるさん」の一連の作品,三上延さんの「ビブリアシリーズ」,岡崎琢磨さんの「タレーランシリーズ」,「三秋縋さん」の作品群などは大好きです。
 また,有川浩さんの「図書館戦争シリーズ」「自衛隊三部作」などは,所謂「ラノベの範疇」とも言えるでしょう。

 しかし,上記の作品は,どれも年齢層を問わずに楽しめるものになっていると考えます。

 

 さて,今回紹介するのは「筏(いかだ)かつら」さんの「君に恋をしただけじゃ,何も変わらないはずった」という作品です。これ,「君に恋をするなんて,ありえないはずだった」という2連作のスピンオフ作品となっています。

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 話題となっいたので前2作を同時購入して読んでみたのですが,正直,
「甘々すぎてオヤジにはきつい」
という面もある作品でした。ストーリーもやや短絡的で深みに欠けている部分がありましたので。

 しかし本作は,全く作品のレベルが違います。
 文章の書き味もブラッシュアップされていて洗練されていますし,何よりもストーリー展開に無理がなく,それでいて瑞々しさは残されている…。作者の筏さんの成長をまざまざと見せつけられている感覚がなんとも心地いい!

 

「君恋」の久美子ちゃんらしい「踏ん切りの悪さ」が絶妙

 前2作の主人公は「飯島靖貴」と「北岡恵麻」。冴えない靖貴と目立つ女の子恵麻が,すれ違いの末に思いを確かめ合っていく過程を描いています。

 この中で,恵麻の親友役として登場するのが,本作のヒロイン「磯貝久美子」です。

 靖貴と恵麻がすれ違う中,密かに靖貴に思いを寄せる久美子。親友が思いを寄せる相手ということで思いを胸に秘める久美子。
 大学進学という節目に互いの思いを確かめることができた靖貴と恵麻を温かく見守りながらも,靖貴への思いを抱えたまま遠く離れた広島の大学へと進学する久美子…という場面で前作は終了していました。

 

 本作は,久美子が思いを寄せていくことになる同じ大学の先輩「柏原玲二」の視点で物語が進みます。

 例に違わず,偶然と誤解によって最悪の出会いをする玲二と久美子…という場面から始まるのですが,筆者の成長を感じるのが,「前作に見られたあまりにご都合主義のストーリー展開」になっていないということ。
 2人の誤解のほどけ方,久美子を取り巻く登場人物との関係や,「玲二の久美子への思い」「久美子の玲二への思い」の変化が,実に自然に,実に繊細に描かれているのです。

 互いの思いが確かなものになっていく過程に無理がなく,その思いの醸成の過程に関わってくる周囲の出来事・登場人物とのかかわりの「必要感」にも破綻はありません。

 この作品,純粋な「恋愛小説」としても相当高いレベルにあると考えます。

 

 また,「スピンオフ」ということで,前2作を読んでいる人にとってはたまらない「前作との繋がり」が随所に登場します。しかし,それが本作単体としてみた際の質感を全く邪魔していません。これって,何気にすごいことですよね。筏さんに相当の筆力がなければあり得ないことだと驚きました。

 前作を読んでいる者にとってたまらないのは,
「美しくしっかり者で完璧にも写る久美子が,相手を周囲の人間を思いすぎるばかり,自分のことになると踏ん切りが悪くなってしまう
という弱さを露呈してい舞う内面を見事に踏襲してくれている部分です。

 途中で自分自身の思いに気付きながらもなかなかその思いを玲二に伝えられない。そのもどかしさが,玲二視点の文章表現からも強く伝わってきます。
 終盤は「久美子視点」での描写があり,「タネ明かし的」な心情の吐露があるのですが,その構成もまた見事!地元に帰っている場面で前作のヒロイン「恵麻」との会話の中で本音が語られるシーンなどは,スピンオフの醍醐味がバリバリ感じられます。

 

 いや〜,本当に読み味のいい,爽やか作品です。
 どの年齢層の方にもお薦めできる,良作ですよ。

 

筏さんの次作に期待!

 この短期間に大きな成長を遂げた筏さん。
 こうなると,今から次作に期待ですね。

 靖貴と恵麻のその後の物語なんかは,いけますよね〜。大学生になり,将来の就職を見据えながら互いの思いを確かめ合う…なんてストーリーだったら,また一皮むけた筏さんの文章を楽しめるかも。

 今から楽しみにしています。