本当にようやくの最新刊! 三秋縋さんの「君の話」
所謂「ラノベ」界の中にあっても,「深み」を感じさせる作家さんはいるわけでして,私にとってそれは「三秋縋」さんだったりします。
まあ,物語の土台が,タイムリープものだったり,自分の命を切り売りしたりと,やはり一般の文芸ものとは一線を画しますし,結末が結局は悲劇的なものになってしまったりしてそこはかとない絶望感を感じさせるなどの「三秋流」の書き味だったりしますので,なかなかその位置付けは難しいとは思っているのですが,他のラノベ作家にはない「凄み」があるんですよね。
また,悲劇的な中にも,自らの生き様を振り返って「自分の在り方を追い求めようとする」肯定的な部分がその底流にあったりもします。
「生と死」をテーマとしながらも,最後まで「あるべきはずの自分」を模索しようとする姿を描こうとするところに,「凄み」の根源があるのかもしれません。
そんな三秋さんですが,2016年9月に発売された「恋する寄生虫」以来,新作の発表がありませんでした。
ネット小説から活動が始まるなど,独自路線の執筆活動をされている方のようですので,
「もしかするともう新作の発表はないのかな?」
と少々心配になっていたのですが,ようやく新作の知らせが舞い込みました。
「君の話」,期待大です!
初の単行本として発売の模様
三秋さんの作品といえば,これまで角川の「メディアワークス文庫」からのみ出版されてきましたが,今回は「早川書房」からの出版のようです。
しかも初の単行本としての出版!
詳しくはわかりませんが,出版社の変更の絡みなど,大人の事情もあり,新作まで2年ほどの間が空いてしまったのかもしれませんね。
紹介欄を見ると,
「親しい友人もおらず、両親とも縁を切って孤独の中で暮らす青年・天谷千尋。彼には"一度も会ったことない幼馴染"の記憶があった。とある夏の日、千尋の前に存在するはずのない幼馴染・夏凪灯花が現れる。優しい嘘と美しい喪失が織りなす、君と僕の……恋の話。」
とのこと。
「記憶」がテーマということで,やはりタイムリープ等の現実離れした要素が含まれるのかもしれません。
また,「嘘と喪失」を土台とした「恋の話」ということで,これは三秋さん得意の分野になりそうですね。
今回は,どんな「エグさ」を出しながらキュンとさせてくれるのか…。今から本当に楽しみです。
まだメジャーとは言えない作家さんかもしれませんが,突飛な設定の割には文章表現にも重みがありますし,読みやすい文体の作品が多いです。まだ読んだことのない方は,これまでの作品を一度試してみては?
個人的には「はずれ」がない作家さんだと思います。これって何気にすごいことかも。
☆追記☆
価格改定となり,お安くなったようですよ。
※追記
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