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ビブリア古書堂の事件手帖〜扉子と不思議な客人たち〜 読了「ホッコリとする日々の中にミステリーのスパイスが効いた篠川家の日常」

一気に時が進んでびっくり!

 作者である三上延さんが,前回までの7冊で一区切り,としていたビブリアの物語が再び動き始めました。

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 7冊目の「栞子さんと果てない舞台」の後書きで,三上さんが,
「今後はこれまでの前日譚や後日譚も可書いていきたい。」
と述べていたことは以前にもご紹介しました。 

 待ちましたよ,1年半…。

 本作「扉子と不思議な客人達」は,まさに後日譚。

 それもそのはず,大元となる舞台は「2018年の秋」です。

 なんと,前作から「7年後」という設定。
 もう,読者側はその急展開について行けません。

 

 そして2人の娘「扉子」は,今年6歳。
 結婚後まもなく誕生したことになります。
 大輔が篠川家に婿入りした設定になっていますね。

 

 この扉子さんは,容姿,本に対する興味は栞子さんとそっくりですが,性格は人見知りせず社交的。そんな扉子の様子を冷静に見つめている栞子さんの思いが数多く綴られており,ホッコリさせられます。

 そして,そんな中にも本に関するミステリアスな話題が4章に分けられて綴られています。
 本の構成とすると,「ホッコリとする日々の中に,ミステリーのスパイスが効いた篠川家の日常」という風情。

 栞子さんにしても,大輔にしても,目線が非常にアットホームなのです。「新感覚ミステリー」という感じですね。 

 ちなみに,本作のサブタイトルは「扉子と不思議な客人たち」となっています。これまでは「栞子さんと〜」という形で統一されていましたので,このネーミング,あくまでも「大輔目線」 で付けられていたのだということが判明しました。

 自分の娘に「さん付け」はしませんので…。

 

扉子が栞子さんにお話をねだります

 物語は,大輔が忘れていった文庫本を栞子さんと扉子がさがす過程で,扉子が栞子さんに対して本に関するエピソードトークをねだる…という流れで進んでいきます。

 友達と遊ぶことよりも本を読むことが好き,そして本に関するエピソードそのものにさえも強い興味をもつ扉子。

 

 栞子さんは,そんな扉子に自分を重ねながら,「これではいけない」という思いももちながら親として接していきます。
 この,「自分を棚に上げいてる感覚」が微笑ましくなります。

 

 さて,それでは本作の内容に移りますと…。


 本作第2章のクリスマスのシーンで,「入籍して一緒に住み始めてから2ヶ月」という記述がありますので,2人が結婚したのは「2011年10月」ということになります。

 そして文中の日付に関する情報を集めますと,本作に収められている4章のうち,前3章は結婚前,あるいは結婚直後,そして最終の4章は現在のエピソードということになります。

 ネタバレになりますので簡単な内容に止めておきます。

 

第1章 2人が結婚してすぐ…

子どもをもうけた坂口としのぶが直面する親族との和解の物語

 

第2章 結婚後2ヶ月

入籍後すぐのゲーム誌関連の母と息子の物語

 

第3章 2011年8月(2人の結婚前)

志田と菜緒との,ほろ苦くもほのかに甘いその後の物語

 

第4章 現在

舞砂道具店との最後の確執

 

 ご覧のように,これまでの7冊に登場した人物の話題が4章中3章を占めていますので,本作を本当の意味で楽しむためには,これまでのシリーズを読んでおくことを強くお勧めします。

 文章のボリューム自体はそれほど多くはないのですが,短いながらも,本に関する各章の登場人物の思いがしっかりと骨太に描かれており,読み応えがあります。

 

 また,あくまでも「栞子さんが扉子にエピソードを伝える」という形を取っているため,各章の主人公は栞子さんと大輔以外となっており,このことが物語を俯瞰的に捉えるという意味で,読み手にとって程よい距離感を生んでくれているように感じます。

 これまでの「ビブリアシリーズ」の遺伝子は当然引き継ぎながら,適度な方向転換を図っているとでもいいましょうか…。
 是非とも実際に読んでお確かめください。

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栞子さんがかわいすぎる…

 全くの余談ですが,文中の栞子さんがかわいすぎます。
 大輔への思いに関する部分です。

「栞子は自分が目にした夫の行動を,少なくとも1ヶ月分は詳細に思い出せる。」

「本を開いている時を除いて,彼女の関心は大体夫と娘に向いている。」

「大輔の無駄のないしなやかな動きに,栞子はつい見とれてしまった。独身の頃からそういう彼を目で追うのが密かな楽しみだった。(素敵だったなあ)」

「(栞子とのエピソードをしたためた大輔のマイブックを閉じて)額に変な汗がにじんでいる。一体あの人は何を律儀に記録しているんだろう。でも,好きだ。」

 大輔,この幸せ者っ!

 

 そして「あとがき」には,
「扉子は今後も物語の中で成長してい予定です。古い本の物語とともに,そのあたりも描いていければ,と思っています。」
と記述されています。

 シリーズ継続確定,ということで,篠川家3人の今後を楽しみに待ちたいと思います。

 

 

 

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