直木賞は混戦か?
第160回の「芥川賞・直木賞」の候補作が発表されました。
候補作はこちら。
直木賞の方は混迷模様でしょうか?
森見登美彦さんは3度目の,垣根涼介さんと深緑野分さんは2度目の候補選出となるとのことです。
個人的には,これまで全ての作品を読んでいる「垣根涼介さん」を応援したい思いです。
「垣根流 新感覚時代小説」を広めたい
以前にも垣根さんに関する記事を書かせていただきましたが,かつてはハードボイルドに振れていた筆が,「時代物」に重きを置くようになるという,実に興味深い著作遍歴をお持ちの作家さんです。
詳しくは以前の記事をご参考になさってください。
共通するのは,「骨太なテーマ性」。
「強奪」「復讐」「リストラ」等,その種類は変遷していきますがそのテーマを表現するために,実に緻密かつ分厚い人物・背景描写と,破綻のないストーリー展開で,読者を釘付けにします。
その筆力というか「筆圧」に圧倒されながら,いつの間にか読了している…というのが,垣根さんの本を読む上でのお決まりのパターン。
そんな垣根さんは,「時代物」へと「鞍替え」したのち「光秀の定理」「室町無頼」,そして今回の直木賞候補作「信長の原理」と,3作を発表しています。
ちなみに2作目の「室町無頼」は,第156回の直木賞候補作。
つまり,時代物に移行してから,2作連続で直木賞候補になっているということです。
「頃合い」なのではないでしょうか?
そろそろ本格的に,
「垣根流 新感覚時代小説を広めたい。」
と考えていたこの時期に,今回の僥倖。
是非とも受賞していただきたい!
時代の渦に巻き込まれる読み心地の「信長の原理」
候補作「信長の原理」に関しては,大絶賛のレビューを以前に掲載しました。
普段は時代物を読まない私でも,あっという間に時代の渦に巻き込まれるように一気読みした作品です。
切り口としては,
「蟻の行列を見ているうちに一つの原理に気付いた信長が,その原理に支配されながら成功を収め,散っていく」
というまさに,「テーマ性」をもった「信長絵巻」とでもいうべきもの。
時代物にしてこのような切り口の作品はなかなか無いのではないでしょうか?
「光秀の定理」にしても,
「確率的には1/2なのに,なぜか常勝するという路上博打」
が物語の発端であり,そのカラクリが光秀の思想・信条を形作っていくことになります。
「垣根流」とでも言うべき新たな切り口を提案した本作は,もっともっと評価されていいものだと考えます。
この著作で直木賞をとれたら…。
是非とも垣根涼介を,より一層メジャーにしたい。
長年のファンからすると,そう思わざるを得ないのです。