TBSの底力と緻密さを感じる「グッドワイフ」
2019第一クールのドラマがおおよそ一巡しました。
皆さんは本クールのドラマにどのようなご感想をお持ちでしょうか?
個人的には…
・予想どおり,「大ヒット」となりそうな「大物」はない
・演者レベルでいうと,「ハケン占い師アタル」の杉咲花さん一人勝ちの様相
・ただし,「ハケン占い師アタル」の「お悩み解決部分」の底が浅くて残念
・「初めて恋をした日に読む話」は,深田さんの大根ぶりが際立つ…
・「3年A組」は,今後の「裏」の部分が非常に楽しみ
・「家売るオンナの逆襲」は,展開があまりに前作と同じすぎでリタイヤ
・「グッドワイフ」は予想に反してドラマ完成度からすると最高点
といったところ。
特に驚いているのは,TBSの「グッドワイフ」の完成度の高さです。
「リーガルドラマ」全盛の中にあって際立つ完成度の高さ
正直,常盤貴子さんの全盛期を知るものとして,このドラマにはそれほど期待していなかったのが事実です。
しかし,現在は「相当に完成度が高いドラマ」と,評価が変わりました。その要因とはは?
①常盤さんの大人の演技
「ビューティフルライフ」を頂点とする,「トレンディードラマ」全盛の頃に活躍した常盤さんの演技は,演技の抑揚が大きく,若々しさ,勢いはあるものの,重厚さや演技の深さという点では物足りなさを感じたものでした。
しかし,この「グッドワイフ」での常盤さんは,夫が逮捕され,子ども達も浮き足立ち,自らも弁護士として復帰したばかりという追い詰められた環境を,浮き足立つこと無く,しっとりと演じています。
恐らく以前の常盤さんであれば,勢いにまかせ,その場その場の感情を前面に出して演じたはず。現在はその感情を「あえて抑える」ことで,「視聴者に考えさせる」演技の域に達していると思います。常盤さんの演技力がここまで向上しているとは正直想像していませんでした。「お見それしましたっ!」という感じです。
②「謎解き部分」に過度な演出がない
①ともからみますが,脚本レベルでも,リーガルドラマ特有の「謎解き部分」に過度な演出がないのが非常に好印象です。
「謎」が浅いということではありません。過度に被告人に感情移入したり,あまりにも無茶な方法での解決になっていたりしないということです。
ある意味坦々と進んでいくことで,「リーガルドラマ」としてのリアリティーが出ているものと考えます。
③「サイドストーリー」の充実ぶりで飽きさせない
ここでいう「サイドストーリー」とは,各話ごとの「謎解き部分」以外で帯的に進む共演者側それぞれの事情のことです。
たとえば,常盤さん演じる杏子の夫,壮一郎。元検察特捜部長でありながら現在は逮捕,拘留中。この壮一郎,部下の佐々木と結託して何かをやらかそうとしていることを,初回からプンプンとにおわせる脚本になっており,ドラマの縦軸として,大きなスパイスとなっています。
また,杏子の同期で所属事務所の共同経営者,多田。一見人あたりは良さそうですが,以前から杏子に思いを寄せているという設定で,そのためには手段を選ばないような凶暴性も備えていそう…。
更に,杏子と正採用枠を争う朝飛,壮一郎と遺恨があるパラリーガルの円香など,匂い立つような登場人物が杏子の周囲に溢れかえっています。
際立っているのが,これらの共演群の暗躍ぶりが,本筋の「謎解き」部分と同等の位置づけでドラマが進んでいくこと。
この部分が,「グッドワイフ」がその他のリーガルドラマと一線を画し,ドラマとしての「総合力」を高めている要因となっている気がしてなりません。
総じていえるのは「TBSの底力」
以上,このドラマをここまで高めているのは,やはり「TBSの底力」といえるでしょう。
伊達に「ドラマのTBS」と言われているのではないということです。
大人でも楽しめる「本格リーガルドラマ」として,グッドワイフには最終話まで突っ走ってもらいたいと願っています。