12章からなる「麦本三歩」のお話→住野作品の「何が好きか?」が見えてくる
恐らくこの週末,「ブルボン」「本社」という検索キーワードでググられる回数が飛躍的に伸びていることでしょう。
新潟県柏崎市…。住野マニアはその地名を知ってにやついているはず…。
何のことか分からない大多数の方は,「麦本三歩の好きなもの」をご一読あれ,ということで,住野よるさんの最新作「麦本三歩の好きなもの」を読了しました。
あくまでも独断と偏見による,素人のレビューです。
毒を吐く部分もあろうかとは思いますが,こんな風に考えるやつもいるのか…と,温かい心でご覧いただければ幸いです。
さて,この「麦本三歩の好きなもの」は,大学附属の図書館の勤務する20代女性の日常を綴った小説…と銘打たれています。
しかし…,そこは住野作品。単なる日常ではありませんね。
いつものように,ぐっとえぐられておりますよ,良い塩梅に。
本作品,以下のように12の章から構成させています。
で,ですね。
正直言うと,前半で投げ出したくなった場面があります。
「つまらん!」
と…。
具体的にいうと,「1〜4章」までの間。
この中で,「第2章」の「図書館が好き」だけは読み応えを感じました。理由は後述しますけどね。しかし,残りの「1」「3」「4」が全く冴えません。
グダグダした三歩のこだわりだけをただ並べられても,窮屈なだけです。その人物設定を押しつけられるような圧迫感を感じてしまう,内容の薄いもののように,個人的には感じたのです。
しかし,「第5章」の「ライムが好き」から流れが急変します。
そして…,最終章の「12章」でまたトーンが落ちる(三歩のこだわりだけが描かれてつまらなくなる)のですが,この「好き嫌い」を自分なりに分析すると,
「自分が,住野作品のどのような部分が好きなのか」
が見えてくるのではないか…という仮説に行き着きまして,何か楽しくなってしまいました。
というわけで,私なりの自己分析を兼ねた考えを,以下に記したいと思います。あくまでも個人的な考えです。
魅力的な登場人物との「絡み」こそが住野作品のキモ
本題に入る前に,本作品誕生までの流れを見ていきましょう。
これ,意外に大事だと思います。
本作品12章のうち,半分にあたる6章は,「小説幻冬」に投稿されたもので,残りが書き下ろしの作品となっています。
また,その「発表順」と前掲の章立てとは大きく異なっており,小説幻冬に初投稿されたのは,本作での最終章「今日が好き」となっています。
ここで個人的に発見したのは,前述した「個人的に評価しない」とした章は,その投稿序盤に書かれているものが多いということです。
また,後述しますが,これらの章には,「三歩と関わる魅力的な登場人物の描き込みが足りない」という共通点もありました。
これは,住野さんが最初から狙っていたものなのか,書き進めている間にいつもの住野節が蘇ってきたのかは分かりませんが,「人物間の魅力的な関わり」が,書き下ろし作品に多いことから,私は後者だと考えます。
ここで私は気付きました。
私がここまで住野さんの作品に魅了されているのは,
・住野さんの登場人物設定の巧みさ,
・その登場人物の感情表現の巧みさ,
・そしてあくまでもその感情表現をストレートに表現しようとしない文章的な面白さ,程よい謎解き感,それをあおる切れのよう文体,
・さらにそれらの魅力的な登場人物の交わらせ方の巧妙さ
に惹かれているからなのだと。
げっ,思いを語りすぎた…具体的な内容はレビュー②で
…まずい。
50オヤジのくせして,思いを語りすぎました。ごめんなさい。
気付けば結構な量を書いてしまいましたので,本作の具体的な内容に関するレビューは,第2弾に譲りたいと思います。汗
明日アップしますので,どうぞご覧下さい。
◆追記◆