湊かなえ最新刊「落日」が9/4発売!
湊かなえさんの前作,「ブロードキャスト」では,初の「青春小説」を手がけ,陸上と高校放送部での活動の中での葛藤を描きました。
その中でも,中学時代に陸上部のエースが代表に選ばれ無かったことが伏線となって…という湊流の「モヤモヤ」が全体を支配していきます。しかし,その落選の理由が最終章が一気に解決され…という,「湊流青春小説」となっているところが一筋縄ではいかないところ。
「甘さは残るが違いは出せた」ということで,私としては評価したい作品です。
問題はその前の作品,「未来」。
これまでの湊作品は,「モヤモヤの行く末に一筋の希望が見える」という展開であるが故,「イヤミス」が成立していたのですが,この「未来」 にはその「救い」が見えず,「10年の集大成」と位置付けるには非常に残念な作品に思えました。
「ブロードキャスト」では,所謂湊さんの書き筋からすると「本流」ではなかったわけですので,本流たる「次作のイヤミスが勝負」と考えていました。
そして…。
いよいよ来ましたよ。
湊さんの次作「落日」が,9/4に発売です。
完全なる「イヤミス」の香りが漂います
なかなか内容に関する記事が見当たらない中,唯一こちらに紹介が掲載されていました。
その紹介文がこちら。
「一家殺害,放火」というセンセーショナルな事件が題材。
その事件を映画化しようとする映画監督と,その脚本を依頼された脚本家は,その事件が発生した町の出身。
さらに,映画監督は,脚本家の姉と同じ幼稚園に通い,事件当時に被害者と同じアパートに暮らしていた…。
匂います!
この人物設定を読んだだけで,プンプンと匂い立ちます。
完全に,子ども時代に事件があった家庭と「何か」がありましたよね?
一家惨殺には,哀しく残念な「裏」がありますよね?
誰かが何かを隠してますよね?
誰かが誰かの何かを暴こうとしていますよね?
そして,誰かが真実をどのように消化しようか悩んでいますよね?
これはもう,「湊流イヤミス」の本流です。
湊さんからの「回答」が楽しみ
「本流」であるからこそ,真価の問われる作品,勝負の一作になると考えます。
「未来」が果たしてどのような意味をもった作品だったかという,湊さんからの「回答」が,新刊「落日」なのではないか?…と。
読み手が求めているのは,「未来」のような絶対的な不快感ではないはずです。
今回の「落日」が,「未来」のような不幸の連鎖に終始するようであれば,いよいよ湊さんの方向性が疑われるでしょう。
しかし,従来のような「不幸,後悔の中にも,何かしらの希望が見える」という方向性を残しつつ,作風をブラッシュアップさせていくのであれば,湊さんの今後は明るいものになるでしょう。
さて,本当に楽しみです。
是非とも視野を広げると同時に,多くの読み手の感情を意識した作品になっていることを望みます。
★追記 レビュー 9/8★