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雫井修介「犯人に告ぐ3 紅の影」レビュー〜リップマン「淡野」の悲哀と警察上層部のしがらみを描く力作〜

「ネットテレビ」上でリップマンと警察の「事情」が交差する

 雫井修介さんの「犯人に告ぐ」シリーズ第3弾,「紅の影」を読了しました。 

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 シリーズ1作目がテレビのニュース番組を舞台に警察の巻島と「バッドマン」とのやり取りを描くという斬新なストーリー展開で話題を呼び,大ヒットしましたが,2作目の「闇の蜃気楼」では,タイトルの由来とも言える「劇場型捜査」の要素は皆無で,肩すかしを食らったということについては,以前書かせていただきました。

 しかし,第3弾は「ネットテレビ」でのリップマン「淡野」とのやり取りが中心として描かれており,「原点回帰」ともいえる作品になりました。 

 そして,この「ネットテレビ」の裏側に思わぬ黒幕が隠れているわけですが,それは読んでからのお楽しみ。

 読み終わっての感想は,雫井さん本来の重厚で,繊細な心理描写に富んだ力作となりました。
 第2作の鬱憤を,見事に晴らしてくれました!
 大きなネタバレにならない程度に,感想を書かせていただきます。

 

主役は「リップマン 淡野」

 本作は,第1作のバッドマン事件の1年後,第2作の「ミナト堂誘拐事件」の数ヶ月後が描かれています。

 つまり,我々読み手の印象よりは,ずいぶんと短期間での出来事として,これまでの三作が密集して描かれているという印象です。
 まあ,1作目の「テレビ」と本作の「ネットテレビ」という,犯人との接触の場の時代的乖離具合に,実際に原稿が書かれたときの流れを感じるわけですが,何とか辻褄は合っているかな…?

 ミナト堂誘拐事件で生き延びた「リップマン 淡野」が本作の主役となります。
 巻島側の警察ではなく,本作はあくまでも淡野の生き様が本筋。

 淡野の生い立ち,後ろ盾となる「ワイズマン」の正体,警察に食い込む「ポリスマン」の暗躍等,淡野側の実情が次々とあらわになり,その時々の淡野の心情が細やかに描かれていきます。
 警察小説でありながら,淡野という一人の男の心情を描く小説という側面が非常に強いのが本作です。

 最後の「しのぎ」を仕掛ける淡野。
 「ワイズマン」との繋がりに自らの生き様を見いだそうとする淡野。
 由香里との生活に人としての安らぎを感じ始める淡野。
 母との永遠の別れに戸惑う淡野。
 警察に追い込まる中,何故か冷静に自分を見つめる淡野。
 自らの亡骸を由香里に託そうとする淡野。

 衝撃的なラストシーンといい,正に本作は「リップマン 淡野」の悲哀がテーマと言えましょう。

 

対「ワイズマン」との第4作が楽しみ

 逆に,「警察側」の描き込みはやや弱かったかなと感じました。

 上層部の秘め事をリップマンに突かれるわけですが,キーマンとなった「秋本」があれほどあっさりと「崩れる」ものでしょうか?

 また,ワイズマンの追い込み方も,やや強引かと…。
 取引決行当日に都合よく何回もトラブルが起きるストーリーにはややげんなりしました。

 しかし,全体を通して感じた「骨太感」は本物です。
 巻島,淡野の人物像がぶれていないのが何より素晴らしい。

 また,淡野を支える由香里の薄幸具合が,本作を緩やかに下支えします。
 これまで他人に心を許さなかった淡野が,「最後のしのぎを終えたら由香里と暮らしたい」と考えるほどに柔らかく変わってく様子が,涙を誘うほど。

 お堅い警察小説に,人の血が通った感覚が,「単なる警察小説」とは感じない要因なのかもしれません。

 最後に…。
 これ,第4弾ありますね!

 黒幕「ワイズマン」との決着がまだついていません。
 最終決戦の前に,更なる登場人物が表れるのか…?
 それとも次作がワイズマンとの決着の章になるのか…?

 恐らくは,本作の数ヶ月後という設定で,第4弾が発表されると思われます。

 いや〜,楽しみになってました!

 あっ,余計なお世話かもしれませんが,このシリーズ,第1作から読んでおかないと,ストーリーについて行けません。
 これまでの作品を読んでいない方は,「予習」しておくことを強くお勧めします。

 

犯人に告ぐ(2)(上)  闇の蜃気楼 (双葉文庫)

犯人に告ぐ(2)(上) 闇の蜃気楼 (双葉文庫)

 
犯人に告ぐ(2)(下)  闇の蜃気楼 (双葉文庫)

犯人に告ぐ(2)(下) 闇の蜃気楼 (双葉文庫)

 
犯人に告ぐ〈上〉 (双葉文庫)

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犯人に告ぐ 下 (双葉文庫)

犯人に告ぐ 下 (双葉文庫)