夏川草介さんの新作が思いのほか早く…
2019年もいつの間にか終盤に入り,
「自分にとっての今年の一冊は…?」
などと考えるシーズンに差し掛かっています。
今年も数々のお気に入りに出会いましたが,個人的にいえばダントツで,夏川草介さんの「新章 神様のカルテ」となります。
東野圭吾さんの「希望の糸」も傑作だと感じましたが,作品としての骨太さ,心が震えるような感覚は,夏川作品が群を抜いていました。
「命」と真正面に向き合うテーマ性は変わらずに,やや堅苦しかった文体から抜け出すという夏川さんの筆力向上ぶりに舌を巻きました。
さて,この「新章 神様のカルテ」は,前作の「神様のカルテ3」から4年の期間を経ての新刊ということで,私としては待望の作品でした。
夏川さん自身が医師ということもあり,次作が仕上がるまでにはしばらく間が空くかな…と覚悟していたのですが,意外なことに早くも新刊が発売となります。
「勿忘草の咲く町で ~安曇野診療記~」。11/28の発売です。
若き医師と看護師の物語
早速Amazonの説明を見て見ますと…。
「高齢者医療」の現在――「生きることと死ぬこと」に迫る連作短編集!
「このまま看取りませんか?」――。患者の数だけある生と死の在り方。命の尊厳とは何か? 答えのない問いに必死で向き合う若き研修医・桂勝太郎と,3年目の看護師・月岡美琴の奮闘を描いた感涙の4編。
ということです。
副題に「安曇野診療記」とありますので,神様のカルテシリーズ同様,長野県を舞台にしたストーリーのようです。表題ともなっている「勿忘草(わすれなぐさ)」は長野県で5月中旬過ぎから見頃を迎える野草のようですね。
可憐に見えるこの花を表題に持ってきたということは,その裏側にある「命」との壮絶なやり取りを予感させます。
しかも,今回の主役が若き研修医と3年目の看護師。自らの理想と現実との狭間で盛んに揺らぐ世代です。神様のカルテシリーズの主人公「一止」宜しく,命から目を背けずに向き合おうとする若い世代の群像劇となるのでしょうか?
現在の立ち位置では,「一止」は中間管理職という位置付けまでキャリアを積み上げています。「カルテ」シリーズでは,研修医を登場させることで,若い世代の葛藤を描いてはいますが,今回は久しぶりに「若い世代を主役」にした物語が進みそうです。
テーマは「高齢者医療」。
「尊厳死」の考え方なども,議論される昨今です。今後迎える超高齢者社会に向け,現役の医師である夏川さんが,どのような方向性で筆を進めるのかに,非常に興味が湧きます。
「カルテ」シリーズとの絡みは?
安曇野を舞台にする医療小説ということで,新刊の発売を知ってすぐに考えたのは,
「カルテシリーズのスピンオフか?」
ということです。
しかし,違うような気が…?
根拠は,「カルテ」シリーズが小学館発刊であるのに対し,本作は「角川書店」から発刊されるということです
さすがに,同一のシリーズであれば同じ出版社から出ますよね…?
これまでの「カルテ」シリーズに,「桂」「月岡」という登場人物っていましたっけ?
何はさておき…。
夏川さんの新作が1年に2つも楽しめるなんて,僥倖です!
若き医療従事者がどのような壁にぶつかり,どのようにその壁を乗り越えるのか…。
4編の短編の組み立てはいかに…?
きっと,読了したときには心のエネルギーをもらえるようなハートフルな作品なっていることでしょう。
★レビュー追記★