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有川ひろ最新刊「倒れるときは前のめり ふたたび」途中レビュー〜2編の短編小説をお知らせしたくて…〜

改名の理由…えっ,それだけ?

 有川ひろさんの最新刊「倒れるときは前のめり ふたたび」が到着しました。
 以前に刊行されていた「倒れるときは前のめり」に続く第2弾のエッセイ集となっています。前の作品は読んでいないのですが,最近の余りの「有川不足」故,今回は購入したということを以前お知らせしました。

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 気になっていた「有川浩」から「有川ひろ」への改名の理由が,最初のトピックとして掲載されておりまして…。
 きっかけは幼なじみのお子さんとのちょっとした関わりから…という驚くべき理由でした。その内容については詳しくは書きませんが,有川さんほどのネームバューがある作家さんが,ペンネームを変更するということは,ご本人はもちろんのこと,出版社等々,結構影響があるやに想像します。それをこれだけの理由でやってしまうのですから,やはりこの方,なかなかにユニークです。
 しかし,個人的には,最近長編を書かれていないことなどと相まって,もっと深刻な事情があるのか…と深読みしておりましたので,何かほっとした次第です。

 また,「知らない」ということは恐ろしいことで,長編は書かないものの,新聞や小冊子も文芸雑誌等への寄稿は精力的に行っていらっしゃったようで,それらに掲載されたものが本作に収録されているようです。

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 それぞれの文章には何の繋がりも無いことから,時間があるときを見計らって散発的に読み進めることにしましたが,自分が最も注目していたのが,本作に収められている新作の2作品です。
 「彼女の本棚」と「サマーフェスタ」。
 これだけはすぐさま読んじゃいました…。
 いや〜,有川節炸裂。その魅力は全く衰えていない,キュンキュンぶりです!

 

初期の有川さんの匂いがする…

 この2作,全くの新作かと思いきや,そうではないようです。一方は「テーマ」が,一方は「冊子化」という点で。

 「彼女の本棚」の方は,「倒れるときは前のめり」に収められた短編「彼の本棚」の「彼女版」という位置付け。同じ題材を異なった視点で描くという,いかにも有川さんらしい作品。こちらは全くの新作のようです。
 「サマーフェスタ」は,何と「県庁おもてなし課」の前日譚であり,文芸雑誌の付録や映画版「県庁おもてなし課DVD」の特典としてすでに発表済の作品とのこと。

①「彼女の本棚」

 アナザーストーリー「彼の本棚」は読んでおりませんが,新米文芸書編集者の男性が,自分が初編集した一作を手に取ってくれた「彼女」の読書風景を観察しながら,思いを深めていくという展開です。
 恐らく「彼の…」は,これを「彼女目線」で書いた作品なのでしょう。互いの存在を意識しながら気付かないふりをして…。会話もしたことがないのに,読み進める本の趣味から心を通じ合わせていくというなんとも甘々な展開…。
 そして最後は見事なまでの告白の場を描きます。

 これぞ「有川節」。非常に短い作品ですが,これだけで有川さんの魅力を感じることができます。空気感としては,「阪急電車」の第一章「宝塚駅」と似ています。私が初めて読んだ有川さんの本,「阪急電車」。その第一章「宝塚駅」は,その中でも最高のお気に入りとなっています。この「章」がなければ,それから一気に有川作品を読みあさることもありませんでした。

 こう言っては元も子もありませんが,有川作品に出会っていない方々は,「彼女の本棚」の部分だけを立ち読みして見るだけでも,意義があると思います。これが気に入ったら,他の有川作品の世界に浸れること請け合い!  取り合えず「阪急電車」と「図書館戦争シリーズ」をまとめ買いして帰路につきましょう(笑)。

②「サマーフェスタ」

 私が衝撃的だったのが,この作品が「県庁おもてなし課」の主人公である「掛水史貴」の前日譚であったということです。
 お役所と民間の感覚の間で揺れ,紆余曲折を経ながらも「明神多紀」との関係性を深めていく貴史が,学生だった頃の物語…。
 この作品で描かれる高校時代からの恋人「千佳子」との4年間で得た「故郷高知への思いと,学生の現実」という苦い思い出が,「県庁〜」に繋がっているかと思うと,感慨もひとしおです。このストーリーの「繋げ方」が有川さんの真骨頂なのだと,改めて感じました。
 そして…。
 「千佳子」への後悔があったからこそ,「多紀ちゃん」との関係性も修復することができたのだ…と,一人納得している自分がいたりします。

 あ〜,やっぱり有川さんの長編新作が読みたい!
 それも,初期の頃のような甘々なやつ!

 と,錯乱するオヤジであった…(失笑)。

 

☆追記☆

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