昨年1年間で心に響いた小説は?
2019年のどん詰まりにあたり,今年読んだ小説について振り返ってみよう…と思い立ちました。
その上で改めて気付いたのが,
「偏っている」
ということ。
読むジャンルも,基本的にいわゆる「小説」(この区分けもよく分からないのですが…)しか読まないんですよねぇ…。ビジネス書,実用書,エッセイ等はあまり手に取ることもなく,「小説」においてもお気に入りの作家さんに限られる傾向にあり…。
「読みたい」と思える作家さんにおいても棲み分けがありまして,新刊発売とともに即購入する作家さん,古書や文庫版で出費を抑えながら読みたい作家さんと,自分なりの価値基準で読書を楽しんでいます。
今回は,本ブログで紹介させていただいた,「即購入したい作家さん」の作品の中から,心に残ったトップ5を紹介させていただきます。
夏川草介さんの「一人勝ち」?
では,第5位からカウントダウンしていきます。
第5位 雫井脩介著 「犯人に告ぐ3 紅の影」
劇場型犯罪捜査という新たな切り口で大ヒットしたシリーズの最新作。
第2作目の「闇の蜃気楼」では,肝心の「劇場型」の影が薄く不満な部分が大きかったのですが,その2作目の事件の主犯格であった「淡野」の悲哀が描かれている本作は,劇場型が復活し,「2作目との連作」と考えると腑に落ちる部分があります。
それにしては2作目からの間隔が随分と空いてしまいましたが…。
まだ「ラスボス」が残っている状態ですので,確実に「第4弾」があります。今年は無理でも,なるべく早いうちにお願いしたい。
第4位 夏川草介著 「勿忘草の咲く町で〜安曇野診療記〜」
「神様のカルテシリーズ」の夏川草介さんが書いた研修医と看護師の奮戦記です。
「カルテシリーズ」とは異なった舞台でのストーリーが非常に新鮮。しかし,信念をもった研修医と看護師が,地域の事情や人間くさい先輩達との間で揉まれていく…という「夏川節」はそのまま!
近年,夏川さんの筆力が格段に向上してることもあり,登場人物の心情がダイレクトに伝わってくる,瑞々しい医療ものとなっています。
第3位 三上 延著 「同潤会代官山アパートメント」
「ビブリア古書堂シリーズ」の三上延さんが書いた本格派小説。
1927年,当時は最先端だった鉄筋コンクリートの高層アパート「同潤会代官山アパートメント」で暮らし始めた夫婦から始まる,4世代に渡る家族の物語です。
令和への橋渡しの時期に出版されたことが,何か運命のようにも感じる心のつながりのものがり。三上さんの今後が非常に楽しみになる良作となっています。
第2位 東野 圭吾著 「希望の糸」
東野さんの最高傑作とも思える ,推理小説らしからぬ推理小説。
ある殺人事件をきっかけに,「生命」「家族」「自分の立ち位置」等のテーマが散りばめられ作品。「ヒューマニスティック」「哲学的」な香りが漂う,東野さんの新たな境地とも思える作品になっています。
第1位 夏川 草介著 「新章 神様のカルテ」
栗原一止が大学病院へと飛び込んだ「カルテシリーズ」の最新刊。
大学病院の医局という「白い巨塔」でも発揮される一止のこだわり,中堅医としての立ち位置,命の意味合いを深く考えさせる患者とのエピソード,そして,障害をもつ一止と榛名の子「小春」の登場による「親」としての視点…。
これまでのストーリーを引き継ぎつつ,より複雑化していく人間関係,医療への思い等を,ここまですっきりと,しかも重厚に描けるとは…。夏川さんの筆力に圧倒させられること請け合いの傑作です。
もっともっと評判になっていい作品だと思うんですけどねぇ〜。皆さんも是非手に取って見てください!
2020年は有川さんから…
以上,いかがだったでしょうか?
さて,2020年は,有川ひろさんの「イマジン?」からの出発となりそうです。
本当に久しぶりの単行本発売なだけに,今から心躍っている状態です。
今後は…。
「半沢直樹シリーズ」のテレビドラマ化を控え,池井戸さんが新作をしたためているという情報もあります。4月からのドラマですので,恐らくは3月には新作発表…という,これまで通りの若干鼻につく戦略で来るはず。それでも買っちゃうんですけどね…。
それ以外に期待したいのは,2019年新作の発表がなかった「垣根涼介さん」の新作。また,「住野よるさん」の新作長編にも期待。三上さんの「ビブリア古書堂シリーズ」の新作があってもおかしくありませんし,東野さん,湊さんも,一作は発表していただきたい!
有川さん,これまでのゆったりペースを一気に解放して「新作ラッシュ」なんてことになれば大変うれしいのですが…。
などと,妄想してみる年の初めでありました。
来年は,どんな本に出会えるかな?
できれば新たな魅力的な作家さんと出会ってみたい…とも思っているところです。