「ドS社長」のはち切れぶりが魅力
前回は,2020年1月期のドラマ評として,「恋はつづくよどこまでも」を取り上げました。
今回取り上げるのは,「この男は人生最大の過ちです」です。
ありえない「イケメンドS社長」を成立させる徹底ぶりに拍手
このドラマ,イケメンで有能な製薬会社社長が,会社の契約社員である女性に奴隷志願する…という,なんとも破天荒なストーリー。
まずもってありえないストーリーなのですが,そんな「ありえない」を逆手に取るかのごとく,徹底したドラマ成立への布石が盛り込まれています。
「振り切れるのだったら徹底的に振り切れる…」という覚悟が見えるのです。
まずもって速水もこみちさんの演技。
まるでAIのロボットのように活躍する有能社長。そしてその実,イエスマンばかりの部下に囲まれていることに不満を感じている。
そこに現れた自分を叱ってくれる女子契約社員に心奪われ…という,いかにも形式張ったというか,コマンドどおりというか,直線的な女性への思いの表し方を,まるでアンドロイドのように演じています。
その中で浮かべる,松井愛莉さん演じる「佐藤 唯」に叱られる際の恍惚とした笑顔…。なんとも不気味なわけですが,あの速水さんがここまでやるか…というるギャップが実にいい!
中途半端感無く,ここまで徹底して役を作り込まれると,コメディーの枠を超えた迫力を感じます。
また,このドラマ,主役である社長と女子社員以外の社員の描き方が実に徹底しています。
周囲の男性社員は社長が通りかかれば立ち止まって最敬礼。
佐藤さんをパワハラまがいにこき使う課長に社長が鉄拳を加えると,途端に課長が忖度を始め…。
社長が佐藤さんへの謝罪をするために,薬剤研究チーム総出動の上,社長が土下座…。
この,事情を知っている主人公の2人とそれ以外の社員との色分けを,大げさに,あえてシリアスに描いていることで,シニカルさと滑稽さが実に際立つわけです。
これ,はまる人は深みにずっぽりとハマるドラマになっています。
深夜枠ということで,30分間に収まるサイズ感も,この異様な緊張感を保つのに一役買っていると思われます。
皆さんも,「こんなの邪道」と偏見をもたず,是非1回ご覧になってみてください。