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半沢直樹2の原作本「ロスジェネの逆襲」を今更ながら読んでみた〜すでに完成されていた「池井戸流」〜

「半沢直樹」2匹目のドジョウはいるのか?

 2020年第2クールのTVドラマは,大ヒット作のリバイバル作品が目白押しです。

 「半沢直樹」「SUITS」「BG」「派遣の品格」。

 これだけのビッグタイトルが一気に集中するなんて…という夢のような展開ですが,東京オリンピック期間となる「第3クール」は確実に視聴率がダウンすることが予想されるため,各局のエースがこの時期に固まってしまったようですね。

 オリンピックの開催が延期になり,「本命をオリンピック前に…」というもくろみが崩れた上に,収録が困難になって放送開始が延期になったドラマが殆どのようで,今クールのドラマには暗雲が立ちこめています。
 何とか事情か好転することを願うばかりです。

 さて,待望の「半沢直樹2」
 原作は,半沢が「東京セントラル証券」に出向となった後の「ロスジェネの逆襲」,「銀翼のイカロス」の2作のようです。それぞれに内容の濃い作品ですので,これを10話に収めるということは前回同様の怒濤の展開になるのは必然。ドラマがますます楽しみになってきます。

 …と,書かせていただいたのですが,この記事を書く前に,
「ロスジェネの逆襲を読んでいない」
という事実に突き当たりました(上記の感想は読了後の印象です)。池井戸作品はほぼ読破しているのですが,銀翼のイカロス以前の3作は,何だかその書名がいかがわしい感じ(?)がして,手にしていなかったのです。「バブル入行組」とか「ロスジェネの逆襲」とか…。池井戸さんらしくない気がして…。

 ということで,今更ながら「ロスジェネの逆襲」を読んでみました。本日は遅すぎるレビューとなります。

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「保身」「裏切り」「プライド」…すでに完成されていた池井戸流

 この「ロスジェネの逆襲」が単行本として発刊されたのが「2012年6月」のようです。
 ドラマ「半沢直樹」が爆発的な人気を博したのが「2013年第3クール」ですので,ドラマ開始時にはすでに作品として世に出ていたたことになりますね。

 読了後まずもって感じたのは,
「すでに"池井戸流"の書きぶりが,完成の域に達している」
ということです。

 幾重にも張り巡らされた伏線,起業家や銀行マンの意地とプライド,そして保身に裏切り…。

 ゴールに辿り着くまでの起伏を綿密に計算し,いくつもの「イベント」が発生することで,決して読者を退屈させることがありません。「完璧」だと感じました。ストーリーとして,ものすごい完成度です。
 これ,必ずドラマはおもしろくなりますよ。確実に。

 さて,ストーリーはというと,半沢が出向の憂き目に遭った直後のお話。
 ドラマは結構な間隔が空いてしまいしたので,年齢のギャップはどのように埋めるのかな…などと,余計な心配をしてしまいます。

 「ロスジェネの逆襲」のテーマは,企業買収と銀行のアドバイザー契約の絡みです。
 IT界の有力企業である「電脳雑技集団」が,もう一方の雄「東京スパイラル」の買収を企てるというところからスタート。買収のためのアドバイザー契約を東京中央銀行の子会社である東京セントラル証券が請け負うが,親会社も黙ってはおらず…ということで,いつもの通り利権を巡った,企業間,金融側の駆け引きが展開されます。

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 追い込まれた東京スパイラル側の前に「ホワイトナイト」として登場する「フォックス」も絡み,事態は進んでいきますが,電脳側,フォックス側にもそれぞれの事情があり…。

 最終的には,半沢側がこの敵対的買収の裏側にある秘密を発見し,東京中央銀行側をぎゃふんと言わせる…という,いつもの展開なわけですが,そのジェットコースター的展開と,「仕事の在り方」を熱く語る半沢の心意気には,池井戸作品の醍醐味を見せつけられたような印象です。

 読み応えあり!
 この時期には,すでに池井戸さんが「円熟の域」に達していたことがよく分かる作品となっています。

 

ここがピークだったか?

 逆に…。
「池井戸作品は,このあたりがピークだったのでは?」
と考えさせられました。

 当然この後も池井戸さんはヒット作を連発していくのですが,本ブログでも何回も取り上げてきたように,ストーリー展開が「水戸黄門的」でしかも「ご都合主義」のように変容していくわけです。

 エンタテインメントとしてはおもしろいが,経済小説としては,
「それ,苦境を解決するために作者がお手盛りで設定したことでしょ?」
と突っ込みたくなるような事柄がストーリー最終盤に必ず出現し,主人公側が成功を収めるという作品展開が続いています。

 本作「ロスジェネの逆襲」は,このあたりが絶妙で,最終盤に苦境を脱するための糸口が見つかるのですが,その結びつけ方がまずまず納得できる範囲。この作品以降の「それはやり過ぎでしょ!」と突っ込むほどではありません。ストーリー展開が破綻していないのです。

「もしかすると,池井戸さんのピークはこのあたりだったのでは…?」
とさえ感じさせるキレと深みがある本作。
 脂っこく,「どうせ最後はこうなるんでしょ?」というお決まりの展開が読めてしまう最近の池井戸作品には「胃もたれ」していた方々が読むには,最適な作品だと感じます。

 ドラマ開始前に,読んでみてはいかがでしょうか?

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