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「ビブリア古書堂の事件手帖Ⅱ〜扉子と空白の時〜」レビュー ◇扉子の成長を時間軸に描く,栞子さんと大輔の時間旅行◇

読了! 「ビブリア古書堂の事件手帖Ⅱ〜扉子と空白の時〜」

 三上延さんの最新作,「ビブリア古書堂の事件手帖Ⅱ〜扉子と空白の時〜」を読了しました。

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 前作「扉子と不思議な客人たち」には,「Ⅱ」という文字がありませんでしたが,今回からは明確に「ビブリア古書堂の事件手帖Ⅱ」という表題に変わりました。
 栞子さんと大輔が結婚し,扉子が生まれたことで,「新章」を綴っていこうという作者である三上延さんの覚悟が感じられます。

 さて,前作「扉子と不思議な客人たち」の叙述から,栞子さんと大輔が結構したのが「2011年10月」であると読み解いたことは以前のレビューでお伝えしました。

 この作品では,「6歳」になった扉子が,大輔に本に関するエピソードをねだる…という形で,栞子さんと大輔の謎解きを綴っていました。
 「扉子」という存在を,「ビブリア古書堂の事件手帖」というシリーズの中でどのように描いていくのか…ということが「シリーズⅡ」における最大の関心事でありましたので,前作は三上さんも手探りのシチュエーションづくりだったのでは…と感じました。

 

これまでの歴史があるからこそ可能な「時間旅行」

 そして…。
 本作「扉子と空白の時」では,高校生になった扉子が,過去の両親の本にまつわる謎解きを振り返る…という展開になっています。中編3篇のうち,最初と最後が9年間の間を隔てた同じ本に関する謎解き。真ん中が扉子が小学三年生当時のオリジナルのストーリーとなっています。

◇プロローグ・・・高校生の扉子
○第一章「横溝正史 雪割草1」(2012年 栞子さんが扉子を身ごもった時期)
○第二章「横溝正史 獄門島」(2021年 扉子 小学三年生)
○第三章「横溝正史 雪割草2」(2021年 第二章の1ヶ月後 扉子小学三年生)
◇エピローグ・・・高校生の扉子

 プロローグとエピローグ当時の扉子の正確な年齢表記は無いものの,「雪割草1」と「雪割草2」が「9年間」の空白のもとに構成されており,「雪割草2」の最終部分で大輔が,自分たち家族の「9年後」に思いを馳せるシーンが印象深く描かれていることから,おそらくは「2030年」,扉子が18歳の高校3年生の場面を描いたのではないかと予想します。
 そうでなければ,ここまで「9年」という時間にこだわる理由も見つかりませんので…。

 まずもって,本作のこの「設定」に最大の面白みを感じずにはいられませんでした。
 これまでのシリーズの歴史,そして,栞子さんと大輔がゆっくりと歩んできた愛の歴史があるからこそ成立する本作の舞台・時間の設定。
「三上さんは,実にうまい攻め口を見つけたなあ…」
とうなりました。

 

実在の「雪割草」を題材にする巧妙さ

 本作の「主役」となる横溝正史の「雪割草」は,まさに近年発掘された実在の幻の長編小説です。

 そのリアルな著作にフィクションのビブリアのストーリーをかぶせてくるあたり,三上さんの巧妙さにやられます。
 謎解きのストーリーは,家族の長きにわたるしがらみをベースに巧妙に描いており,読み応えがありました。

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 また第二章では扉子に焦点を当て,栞子さんに負けず劣らずの「本好き」に育っていく過程を,「圭」という親友ができるきっかけとともに破綻なく描いています。

 三上さんは「あとがき」で,
「今回の話で急成長した扉子が活躍する話もなるべく早く書きます…」
と記しています。
 「ビブリアⅡ」の書き口が,今後も栞子さんと大輔の謎解き中心で書かれていくのか,それとも扉子中心へと移行していくのか…。はたまた,その時々に「篠川家の時間旅行」のように自由に描かれていくのか…?
 謎解きという楽しみはもちろんですが,本シリーズにおいては「篠川家」の変遷が最大の魅力になりうるという,不思議な魅力をもつシリーズへと成長しているような気がしてなりません。