「取って出し」が優秀だったからこその期待!
SONY「WH-1000XM4」のレビューをしております
ここまで,ここまで,「開封・セッティング・ファースインプレッション編」「取って出しの音質編」「ノイズキャンセリング編」をお届けしてきました。
そして,今回は肝心要の「音質編」となります。
30時間を超えるエージングを行いましたので,「完全」とまでは行かないまでも,「取って出し」時との変化や本機の本質は少なからず見られるはず。
ゼンハイザーの「MOMENTUM Wireless3」も,10時間単位で大きく変化していきましたし,30時間経過時には,その実力をはっきりと掴むことができました。
今回の「WH-1000XM4」は,エージング無しの「取って出し」の段階で,しっかりとした解像度が印象的でした。
「取って出しでこれ程優秀だったら,エージング後はとんでもないことになるのでは…」
という大きな期待を込めながらの音質評価。
さて,その結果は?
あまりにもエージングの効果が見られない…
結論としてまず言えることは,
「エージングの効果があまり感じられない…」
ということです。
以下に,「取って出し編」に書かせていただいた音質面での印象を再掲します。
②完全なモニター機(分析的に効くには最適解)
③安泰したフラットな音質
④「MOMENTUM Wireless」が鈍重に感じるほどの(軽めだが)スピード感,アタック感のある音
⑥モニターライクであるが故に,音に艶や色気がない(軽すぎる)
⑦分解能が非常に高い分,ここの音の輪郭がはっきりしており,分析的に聴くにはいいが,音のつながりが悪く,それぞれの音が浮き上がっているように聴こえる
⑧高音側は,解像度はあるが,一枚ベールに包まれているような不透明感がある
非常に解像・分離に優れた音ではあるものの,低音のボワツキや音の繋がりに課題が残り,自然な聴こえには至っていないということです。
また,解像感はあるものの何かベールに包まれたような不透明感があるとともに,音に艶がないこともエージングに期待をかけたいポイントでした。
しかし,エージングの効果が…。
確かに音の繋がりという点に関しては,やや向上したような印象を受けます。低・中・高が,取って出しの際よりも滑らかに繋がるようになりましたが,それにしても満足できるほどではありません。
モニター機特有の一つ一つの音の成分の輪郭をはっきりさせようとする意図が,明らかに「心地よさ」の邪魔をしている印象を受けます。
更に,本機のせっかくの魅力である「中・高音部」のベールのかかったような感覚が消えません。せっかく解像度が高く,美しい音を奏でているのに,ダイレクトに耳に届く感覚が薄いのです。このあたりが,「人工的な音」と感じてしまう所以なのかもしれません。
加えて,エージングを重ねても,「色」「艶」のような要素は全く生まれることなく,心地よい音に変化する様子は全く見受けられません。あくまでも,分析的に,あるいはさらっと聴くという用途に向けたヘッドホンなのだと感じました。
総じて,上記の「ファーストインプレッション」がそのまま,最終的な音質の判断だと考えて問題は無いでしょう。
リスニング用には向かない…
「取って出し」の状態が非常によく,期待が大きかっただけに,個人的には残念なエージング結果となりました。リスニング用途には向かないようです。
「MOMENTUM Wireless3」には及ばずとも,エージングを通してもう少し色艶や深みの部分を表現できるようになれば…と考えていただけに,メイン機の座は「MOMENTUM Wireless3」から変わることはなさそうです。
「MOMENTUM Wireless3」は,音の繋がりが本当に自然で,音の要素が音楽全体に溶け込んでいるように聴こえます。頭の中で生演奏が行われている感覚です(大げさでなく)。
加えて,心に染み込んでくるような深い低音が響き,ボーカル帯の張り出しも適切。解像感のある高音は,もう少し伸びてくれてもいいように感じますが,恐らくこれ以上強くなると実際の演奏よりも強調された感じに聞こえるのでしょうし,聴き疲れを誘発するものと考えます。
「名機なんだなあ…」
と今回の「WH-1000XM4」との比較で改めて感じた次第です。
また,自分自身がゼンハイザーのリスニング傾向の音が好きなのだ…ということも再認識させられました。
SONYの音が好きな方であれば,「WH-1000XM4」の音を評価するでしょう。こちらも,非常にレベルが高い音であることは間違いありません。後は好みなのでしょう。
「WH-1000XM4」のノイキャン性能は最強ですし,「MOMENTUM Wireless3」では濃密すぎるような曲を聴くにはいいかもしれません。売却することはせず,用途に合わせて併用していこうかと考えております。