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池井戸潤「半沢直樹/アルルカンと道化師」レビユー 〜正に「探偵半沢」 推理小説と銀行小説融合した「勧善懲悪」ストーリー!〜

池井戸潤「半沢直樹/アルルカンと道化師」読了

 池井戸潤さんの最新作「半沢直樹/アルルカンと道化師」を読了しました。

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 以前にも紹介しましたとおり,「半沢直樹シリーズ最新作」とはいうものの,本作は「半沢直樹1 オレたちバブル入行組」の前日譚となっています。
 シリーズ化されている作品において「時間を遡る…」ということで,池井戸さんとしてもなかなか厳しい現実があるのでは…と感じます。題材探しにおいて。

 それはさておき…。
 本作は,これまでの半沢シリーズとは書き味が異なり,所謂「推理小説的」なストーリー展開が盛り込まれています。
 しかし,当然最終盤での「倍返し」もあり,てんこ盛りの状態。

 そんな,ともすると情報過多になりそうな題材を,これだけ読みやすく,腑に落ちる形でまとめてしまう池井戸さんは,やはりただ者ではないと関心されられる作品となっています。
 エンタメ作品としての完成度が半端ない!

 

「探偵半沢」と銘打つことに納得!

 本作の帯には,以下のように,
「探偵半沢,絵画の謎に挑む」
というコピーが。

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 銀行小説に「探偵」?
 と,大きな違和感が残ったまま読み始めますが,中盤まで読み進めると,単純に納得してしまいます。

 本作は,老舗の出版社である「仙波工藝社」と,その仙波工藝社にM&Aを仕掛けようとするIT企業「ジャッカル」に,半沢が務める東京中央銀行大阪西支店が絡んでいく形で進んでいきます。
 ここに,「アルルカンと道化師」の絵で世界的な評価を得ている画家「仁科譲」が絡んでききて…。

 当然,この「アルルカンと道化師」の絵に秘密が潜んでいるわけですが,その謎を推理小説の探偵宜しく半沢が究明していく下りが,これまでの半沢シリーズにはない本作の「色」となっているわけです。
 あえて「探偵半沢」と銘打ったことは,正に的を射ているといえましょう。 

 元々池井戸さんの書く小説は,銀行内部の陰謀を解明し,それを暴いていく…というものが主流です。「謎解き」事態はお手の物なのでしょうが,本作の舞台が「芸術」ということで,池井戸さんの挑戦を感じ取ることができます。

 また,「アルルカンと道化師」の絵に関する謎を解く過程で,仁科の秘密が明かされていくわけですが,これも池井戸さんお得意の「人情話」へと発展していきます。内容とすれば特段目新しさを感じることはないわけですが,卓越したストーリー展開や,その破綻のなさに舌を巻かざるを得ません。
 池井戸さんには,その絶対的な筆力をベースに,読み手を引き込む「人たらし」的な魅力がありますね。

 

当然,「勧善懲悪」の「倍返し」も

 そして…。
 半沢直樹シリーズで忘れてはならない,「倍返し」も用意されています。

 最終盤の「勧善懲悪」に向けてひた走る疾走感のようなものは,これまでのシリーズ以上の迫力を感じます。
 また,今回の「勧善懲悪」に当たっては,半沢だけではなく,大阪中央銀行の顧客である大阪の人たちの「人情」が重要な役割を担います。この点も,これまでの書き味との違いを感じる要因だと考えます。

 全体を通じて,これまで感じていた「完全お手盛りの水戸黄門的ストーリー」から視野を広げた,嫌みのない作品になっていることが好印象でした。
「最近の池井戸作品は,ベタすぎてしつこい…」
と感じていた方にも,安心してお薦めできる作品となっています。

 ドラマの最終盤に発売時期を合わせてくるなど,相変わらずの商業主義の匂いが鼻につきますが,作品事態は「さすが池井戸さん」と唸る出来。
 是非読んでみてください。