湊かなえ「残照の頂〜続・山女日記〜」読了
11月11日に発売された、湊かなえさんの最新刊「残照の頂〜続・山女日記〜」を読了しました。
本作は、以前ご紹介したように、「山女日記」の続編となっています。
イヤミスの女王とも言われる湊さんの作品にあって、「花の鎖」「物語のおわり」のような読了後にほっとできる作品群の中に入る「山女日記」でしたので、本作にも期待しながら読み始めました。
「山の必要性」と「山のイメージ」と
前回もご紹介しましたが、本作は四編から構成されています。
事前に大まかな内容は発表されていましたね。本書の帯にも以下のように書かれておりました。
前作「山女日記」は七編の短編集でしたので、本作は「中編集」というところか?
個人的には、前作程度の長さの文章の方が、余計な記述がなく、すっきりと読むことができるのでは…と感じました。
全四編の評価としては、「後立山連峰」「武奈ヶ岳・安達太良山」が良作、「北アルプス表銀座」「立山・剱岳 」が平凡な作…というところでしょうか。
ダントツで読み応えがあったのは、最終章の「武奈ヶ岳・安達太良山」ですね。
この作品は、学生時代にすれ違った女性同士が、それぞれの人生の岐路を進んだ後に、それまでの半生を振り返りながら手紙のやり取りをする話。湊作品で手紙…というと、「往復書簡」を思い出しますが、このやり取りの裏に、順風満帆だと思っていた相手方の人生に大きな試練が待っていた…という、湊流のトリックが潜んでいたりします。
「後立山連峰」は、連れだって山を登る二人の女性の話ですが、当初メインだと思われていなかった側に、実は秘密があって…という展開。一編で二人の女性の生き様を描くという点で、意外性が感じられる作品でした。
若干物足りない…と感じた原因としては、
「別に"山"をベースに描かなくてもいいストーリーなのでは…?」
「安易に、山と人の死を結びつける傾向が強い…」
という疑問が生まれてしまったからです。
「山の必然性」という部分は、本シリーズでは絶対に誤ってはいけない部分でしょうし、「山のイメージ」ということについては、シリーズ化することによってどうしても偏ってしまいがちな要素ではあります。
今回はそこがうまく整理されていなかったかな…と。
また、七編→四編というように、一つ一つのストーリーの分量が増えたことにより、前作のようなそぎ落とされた文章のよさが失われ、若干言い訳じみた文章として感じられたこともマイナス要因でしょうか。
湊さんが、もし「第3作」を考えているのであれば、題材や文体など、それなりに配慮しないと、作品のレベルを落としてしまう可能性もあるな…と感じました。
もちろん、湊さんのこの手の作品は非常に好きですので、続けてもらいたいのですが…。