IntelがTSMCに急接近?
AppleのM1系チップの高性能ぶりに関しては、2020年のデビュー以来常に話題になっていますね。
2021年後半にはついに「M1 Pro/Max」が登場し、一部の作業においては現行Mac Proを凌駕する性能を発揮した…というレビューも投稿されています。
Apple Siliconが注目されているのは、単純な性能面ばかりではありません。
これまでのx86ベースのIntelチップではなく、SoCベースとなるチップでこれだけの性能を出し、スマホやタブレットだけで無く、PC用途ととして必要十分なパワーを発揮できることを証明したことが画期的なわけです。
その上で、電力効率に優れ、当然発熱も抑えられているといういいことづくめ…。
今後の注目は、
「PC業界がSoCチップ搭載に傾いていくのでは…」
ということ。
ノートタイプPCが主流となった現代では、やはりSoCチップ特有のバッテリーもちと低発熱は大きな魅力ですし、その上で性能面が保証されるのであれば別に従来のx86ベースにこだわる必要はないわけです。
まあ、そこにはARM版WindowsOSのライセンス問題や、ソフトウエアの互換性問題等が絡んできますので一朝一夕には行かないのでしょうが、Apple Siliconのよさが認知されるのであれば、世の流れが一転する可能性は十分あり得ると考えます。
そうなると、「Apple+TSMC」のタッグで高精細化を進めているチップ開発・生産体制が非常に大きな強みを発揮するわけですが、以前からIntelがTSMCに近づいている…という報道もありました。
そして、大きな動きがあったという情報が来ています。
Intelが、Appleと同等の生産枠を獲得した?
Metor LakeのiGPUでTSMCの3nmプロセスを採用
記事によると、
TSMCが2022年第4四半期(10月〜12月)に立ち上げる見込みの3nmプロセスでの半導体生産能力(生産枠)について、IntelがAppleと同程度を獲得したと台湾メディアDigiTimesが伝えた
ということです。
Appleは、「A17Bionic」「M3」チップで3nmプロセスルールを採用すると言われています。
これまでは、TSMCが生産するこのような最新技術を投入したチップは、ほぼAppleが独占して導入してきたようで、そのパイプは非常に太いものであることは確かです。
それ故、ただでさえ立ち遅れていた3nmチップに関しては、これまで同様Appleに独占的に供給されると考えてきましたが、ここに来てIntelが食い込んできた…ということのようですね。
ここで疑問なのは、
「Intelは3nmのプロセスをどこで使用するのか?」
ということです。
現行「Alder Lake」は「10nmプロセス」、次期13世代「Raptor Lake」も「10nmプロセス」、その次の第14世代「Metor Lake」でさえ「7nmプロセス」を使用すると言われています。
2023年といえば、第14世代「Metor Lake」の代にあたるようなのですが…。
実はこの「Metor Lake」、マルチダイ構造になっており、
「iGPU部分はTSMCの3nmプロセスノードが採用される」
ということなのです。
SoCチップは1枚のチップの中にCPU・GPU等が全て収まっている構造ですが、「Metor Lake」に関してはCPU部分とGPU部分を別構造にして結合している…ということなのかもしれません。上の画像を見ても、明らかにチップが分離されているのが分かりますね。
Appleの「マルチダイ」は、1枚のチップを複数枚結合して…という考え方のようですが、Intelでは機能別のチップを結合する…という考え方なのかもしれません。
TSMCによるApple優遇の行方は?
Intelは、Apple Siliconの躍進に大きな危機感を感じているはずです。
x86が否定されてしまっては死活問題にも繋がります。
今回のIntel流「マルチダイ」構想は、そんなApple Siliconに対する対抗策と言えるでしょう。
さて、世のユーザーはどちらを選択するのか?
ここから数年は、熾烈な生き残り競争が展開されそうです。
また、気になるのは、AppleとTSMCとの関係性です。
これまでは独占的にTSMCの最先端技術を享受してきたAppleですが、Intelが大きく食い込んできたとなると、これまでのような優遇が残るのかどうか…。
チップの確保、価格等にも大きく関わってくる重大事項です。
Appleにしてもただ指を咥えてみているわけではないでしょうから、業界の再編成があるのかどうかに関しても注意深く見ていく必要がありそうです。