SONY「WH-1000XM5」の立ち位置は?
SONY「WH-1000XM5」のレビューをしております。
これまで、「到着・セッティング編」「取って出しの音質編」をお届けしてきました。
その後もしばらく鳴らしてみましたが、予想通りにエイジングでの大きな印象の変化はありませんでしたので、今回は他のイヤホン、ヘッドホンとの比較をした上で、本機の立ち位置に付いて考えてみたいと思います。
先日の「取って出しの音質編」で感じた本機の音質は以下の通り。
〇音場がやや広がり、前後左右への広がりも改善された。
〇中音のボーカル帯が近くで聴こえ、張り出し具合も強くなった。
〇低音の締まりもやや向上した。
〇音の厚みが非常に増した。それでいて解像度が上がっているので、非常に良質の音として聴こえる。
△音場が広がったというものの、WF-1000XM4の方がより広い。
△特に奥行きの面でWFの方が優れており、密閉感が少ない。
△ボーカルが近すぎると感じるユーザーがいるかも…。
先代のM4に比べて非常に大きな音質向上がみられました。
特に音場が広がったことによって、先代までの小さくダマになって聴こえていた感覚がなくなりました。
また、それに伴うかのように音の輪郭も明瞭となり、解像感も増しました。
さらに、中音域の聴こえが近くなったことでボーカルがしっかりと主張し始めましたし、音の厚みがしっかりと感じられ、非常に上質なサウンドになりました。
「WH-1000XM5」単体としてみると、音質に関してはこれ以上ない…と感じるほどのアップデートとなっています。
後は相対的な比較です。
今回はゼンハイザー「MOMENTUM Wireless3」とイヤホンであるSONY「WF-1000XM4」との比較…という観点でまとめたと思います。
三者三様… 決め手はない
結論から言えば、
「三者それぞれに強みがあり、決め手はない。好みの問題となる」
ということです。
①WH-1000XM5
バランスが良く、最も濃厚で厚みのある音。
他の2機種に比べるとやや音場が狭く、密閉的に聴こえる。この聴こえ方が好みであれば、最善の選択となる。
解像感も十分で煌びやかさもあり、音の素性としては最も高い。
中音がぐっと近づいてくるが、やや近づきすぎの感も否めない。このあたりも好み次第。
フラットで開放感がそこそこということで、モニタライクなサウンドとなる。
②WF-1000XM4
音のバランスは当然WHに似通っており、非常に好ましく破綻なく鳴らす。
WHとの最大の違いは開放感。特に奥行き感が秀逸で、WHと比較すると音場が格段に広く聴こえる。
WHの密閉的な感覚が苦手であればこちらの方が幸せになれる。
WHと比べるとやや解像感で劣り、音の厚みの部分で薄さを感じる。特に中高音の部分では無理に出している感じ。しかし、あくまでもWHとの比較であり、単体として、あるいは他社製品との比較の上では非常にレベルが高く、大きな不満とはならない。
中音も近くで聴こえるが、WHよりも若干引いており、正に丁度いい!
音場の広さもあって、ボーカルを心地よく聴くのには最適である。
リスニング的に聴く上で素晴らしいイヤホンである。
③MOMENTUM Wireless3
かつては「最強」と考えていたMOMENTUM Wireless3であるが、SONYの2機種と比べると音の密度感・厚みの部分で後れをとる。
当初から感じていた「中音のボーカル帯がやや奥まっている」という感じが非常に目立つように感じた。SONY2機種が音の厚みで勝るため、中音部がますます貧弱に感じられる。
また、中・高音部のシャリ付きも感じられる。これは最新機種のイヤホン「MOMENTUM True Wireless3」でも感じられたことで、完全ワイヤレスにおけるゼンハイザーの弱点。
反面、「空間作り」はさすがの一言。
最も音場が広く、立体感は最強。それ故中音域の弱さが非常に悔やまれるが、雰囲気重視で聴きたいのであれば最良の選択になり得る。
また、SONYもかなり艶のある艶めかしい音を出せるようになってきているが、この面ではゼンハイザーの圧勝。
その分、本質的な音質とのギャップが目立つようになってきてしまっているが、リスニング用途として好みであれば十分に戦える性能をもつ。
以上、はっきり言って決め手はありません。
本当に好みの問題。
後は、「MOMENTUM Wireless3」の後継機に期待ですね。
現在の音場の強さを活かし、中・高音部のシャリ付きを抑える形で新型を出してくれたら、正に最強のノイキャンヘッドホンになることでしょう。