AVIOT「TE-Z1PNK 」、その音質の位置付けは?
AVIOT「TE-Z1PNK 」をレビューしております。
これまでは、「開封・ペアリング編」「音質ファーストインプレッション 前編」と来まして、今回は「音質ファーストインプレッション」の後編です。
さて、前回は、最強音質と考えているAVIOT「TE-J1」の音質と比較しながら、「TE-Z1PNK 」の音質傾向をまとめました。
もう一度書かせていただくと、以下のように…。
〇低音の量、重さは「TE-J1」より上。
〇 "ずっと真夜中だったらいいのに" の「ミラーチューン」などを聴くと、ベースやギターの艶めかしい低音が押し寄せてきて心地良い。
△量・雰囲気ともに評価できる低音だが、締まりがなくだぶついて聴こえる。ゆるい音傾向がハマる曲があることは事実だが、この量感のある緩さが中・高音をスポイルすることの方が多い。
△低音の量感が多く、しかも前にせり出してくる聴こえ方をするために、中・高音が引っ込んで聴こえる。特に中音のボーカル帯の物足りなさは顕著。
△中・高音は量感だけでなく解像度も不足しており、伸びも足りていない。「TE-J1」のどこまでも伸びていく感覚は影を潜め、伸びきれないBluetoothを感じさせる高音部。
△低音部は左右の広がりを大いに感じるのだが、中・高音部が埋もれている感覚が強いため、「全体として」の音場の広がりを感じづらい。
△豊かな低音と、カスカスしている中・高音部との繋がりが良くない。「ウーファーとしてダイナミック型を、ツイーターとして平面磁気駆動型ドライバーを同軸上に配置した新開発コアキシャル2wayドライバー」がウリだったはずだが、はっきり言ってそのよさを生かし切れていない。
はっきり言えば、大概の人が聴いて「高音質」と感じるのは「TE-J1」でしょう。
レビューでも書いたとおり、「TE-J1」の音質のバランス、解像度は正に奇跡的です。
その音質傾向が「DX300Max + IE900」という有線最高クラスのサウンドと似通っているということを考えても、これまでの常識を覆すイヤホンだと私は感じています。
「低・中・高のバランスを崩さない音作り」「締まった低音、しかも十分な量感」「せり出してくるボーカル帯、解像度もバリ高」「どこまでも突き抜け、煌びやかで細くならない高音」「横方向にも広がって奥行き感もある音場」等々。
本当に穴がないのです。
対して「TE-Z1PNK 」は、多くの「穴」がはっきりと見えてきます。
「だぶついた低音」「量感が足りず、解像感も薄い中・低音」「全体として狭まって聴こえる音場」等々…。
現時点では、「TE-J1」に搭載された「ハイブリッド式」のドライバーシステムが完成形を迎えているのに対し、「TE-Z1PNK 」に採用された「ダイナミック型 + 平面磁気駆動型ドライバー」の新開発コアキシャル2wayドライバーは未成熟…と言わざるを得ません。
しかし、「TE-Z1PNK 」には絶対的な強みと言える部分があります。
それが「最高に艶めかしく深みのある低音」です。
底から湧き上がり、魂を揺さぶると言いますか、他のイヤホンにはないゾクゾク感があるんですよね。
「TE-J1」も十分に低音の量感はありますし、非常に引き締まった「高級有線イヤホン」のような低音を鳴らします。
しかし、「TE-Z1PNK 」ほどのゾクゾク感はないわけで…。
というか、有線の最高峰「IE900」も「TE-J1」と同様の音傾向であり、これが正攻法なのだと思います。
低音の雰囲気を楽しむイヤホン
ということは…。
この「TE-Z1PNK 」は、
「低音ベースの音の雰囲気を楽しむイヤホン」
と言えるでしょう。
「ボーカルをしっかり聴きたい…」「全体を分析的に聴きたい…」という用途ではなく、低音ベースの音楽を、全体の雰囲気を楽しみながら聴く…。
そんな聴き手とのマッチングが成功したとき、唯一無二のイヤホンになり得る…。
「TE-Z1PNK 」はそんな独特の存在と言えるかもしれません。
というわけで、「TE-Z1PNK 」が約4万円、「TE-J1」が約2万円という値付けを考えた際に、圧倒的にコスパがいいのは「TE-J1」だと私は考えます。
というか、2万円で現時点で最高の音質が手に入る…ということを考えると超バーゲン価格かと…。
個人的には、もうしばらくはワイヤレスイヤホンの買い換えをしなくてもいいかな…と考えるほどに「TE-J1」に満足しております。
ただし…。
これはあくまでも「取って出しの音質」という段階。
エイジングで音質傾向が変わらないイヤホンが多くなっていますが、もしかすると…という期待をもちながら、黙って20時間慣らしたいと思います。
次回は、「エイジング20時間経過編 」。
音質の最終評価をしていきます。