東野圭吾「マスカレード・ゲーム」読了
東野圭吾さんの最新刊、「マスカレード・ゲーム」を読了しました。
上掲の発売紹介の記事でも書きましたが、前作であるシリーズ第3刊「スマカレード・ナイト」は、余計な情報が多すぎて推理ものとしてのリズム感に欠けたり、種明かしを犯人の独白に任せたり…という大きな問題点を感じていました。
シリーズものとして、新田、山岸の姿が生き生きと描かれていましたし、活劇的な面白さや東野さんの非常に分かりやすい文体が素晴らしかっただけに、非常に惜しい…というところ。
最新刊の本作はそのあたりがどうか…と読み進めましたが、まずまずの良作に仕上がっているのではないでしょうか?
そして…。
まずもってエンディングが衝撃的すぎます。
第5弾が楽しみで仕方ありません。
共通の心の傷を抱える家族が集うわけとは?
物語の大筋としては、
「過去に過ちを犯すことで人を死なせてしまったものの、それぞれの事情で軽微な罪にしか問われなかった…という共通点をもつ人間がつきつぎと殺されていく。そして、それらの事件の被害親族が、なぜか"ホテルコルテシア東京"に集い合う。その目的とは?」
といったところ。
愛する家族の命を理不尽に奪われた後に残るのは、
「犯人を殺したい」
と考える怨念なのか?
それとも、
「これからも生きていくための希望」
を求めたいと願う気持ちなのか?
そして、誰が異なる過去の事件の犯人を殺していくのか?
何のために?
謎が謎を呼ぶ被害親族達の行動を、警視庁、そしてホテルコルテシア東京のスタッフが追いかけます。
当然その中心となるのが、警視庁の新田と、ホテルコルテシア東京の山岸。
新田は、警視庁捜査一課の警部となり、立場が中間管理職になりました。
山岸は米国勤務の途中で、3度目の警察介入への協力のために急遽呼び戻されます。
この2人の関係性で、以前の作品との違いを感じるのが、
「互いの思いを尊重し合っている」
ということ。
新田は、山岸のホテルマンとしての考え方を尊敬し、他の警察官の乱暴な考え方をせき止める役割に徹します。
山岸は、「新田さんだったら分かってくれる」と、新田がホテルの意に沿わないことは行わない…と信じ切っています。
これまでの作品で互いの心持ちを探り合っていた展開とは大きく異なり、2人の信頼関係の下に捜査が進んでいく…というのが本作の特徴となっているのです。
このあたり、何か感動的でさえありました。
また、肝心の連続殺人に関しては、後半で一気に被害者家族と犯人との関わりや、それぞれの事件に関する考え方が露見し、納得の解決へと進みます。
前作「マスカレード・ナイト」では、東野さんのごり押し面が際立ち、推理ものとしての醍醐味は崩壊していましたが、本作は事件の背景とそこに関わる人物の思いが交差する非常に腑に落ちるラストとなります。
「年齢」「精神状態」等の事件時の状況によって、下される判決に納得できない面がある。
しかし、その判決の下で、加害者側も悩み、苦悩し、自分なりの贖罪の在り方を探している…という、なにか救われるような描き方をされており、やるせないながらもほっとできる面がある終末です。
読み応えあり。
お薦めします。
そして驚愕のエンディング!
そして…。
本作のメインは、事件解決後の最終章。
ラスト9ページの中にあります。
本当はここでご紹介したくて溜まらないのですが、これをばらしてしまっては本作を読む意味も無いかと…。
ただ、次作「第5弾」が楽しみでしょうがなくなること間違いなしのとんでもないことが起こります。
しかし、読了後に考えると、そのように展開になるべく、東野さんの伏線が非常に多く張り巡らされいた…ということにも気付くのですが。
さあ、まずはページをめくってみてください!