AppleはiPadProをコンピュータ化しようとしている?
今年初頭に流れていたiPadProのCMは,何故か全世界定期に不評だったようです。
女の子が自由自在にiPadProを使いこなし,
「Computerで何やってるの?」
と問われたのに対して,
「What's a computer?」
と返答する,例のあれです。
まあ,その横着な返答ぶりは,いかにもアメリカという感じですが,不評の原因はそこではなく,「Appleの考え方に賛同できない」という部分が大きかったのではないでしょうか?
「いくらiPadが高性能化しても,Macのような使い勝手のよさを求めるのは無理。」
「Appleよ,それは強引すぎだよ!」
というもの。
最近では,「gori.me」さんでも,同様の意見がアップされていました。
しかし,私は全く異なる考えをもっています。
Computer≠Computer
それは,AppleはこのCMで「iPadはComputerではない」ということを明言したということ。
その昔,Computerといえば馬鹿でかくて正に机の上で作業するデバイスでした。
それがノートタイプの普及により,「ラップトップ」と名付け慣れたように,可搬性の要素が加わったわけです。
その後,「2in1」「画面タッチ」「スタイラスペン」等の付加価値がどんどんと求められるようになってきました。
この部分で答えを出す際,「YES」としたのがWindows。「NO」とし続けているのがAppleです。
Windowsにおいては,ノートPCの主流が「2in1」タイプ。
つまり,通常のノートPCとしての作業と,切り離したタブレット端末としての作業を,「一つに統合しよう」という理念です。
反対にAppleは,「ノートPC」としての作業はMacへ,「タブレット端末」としての作業はiPadへと,明確な分業化を図りました。
だからこそ,未だにMacではタッチパネル搭載機は登場していませんし,ペン入力にも未対応。第一,画面が取り外せないのですから当然のことです。
しかしながら,Macには「Trackpad」という魔法が存在することで,「ノートPCとしての作業」においては,Macの操作性がダントツであるわけです。
また,今後もMacとiOS機器との物理的な連携には慎重な姿勢であることを,クックCEOも明言しています。私がその考えに大賛成であることも,以下の記事にまとめさせていただきました。
その上でiPadの位置付けを考えると,これまでMacではできなかった,さらなる可搬性,手書き機能等を,できるだけ高度にこなすデバイス。
また,「iPhoneやMacとのいいとこ取りをした上で,両デバイスを「繋ぐ」存在になるデバイス,ということなのではないでしょうか。
だからこそ,先のCMでは,iPadProを「Computer≠Computer」,
「Computerに近いものであるが,Computerではないもの」
「これまでにはない,表現を可能にするもの」
として表現する手法として,「What's a computer?」という文言を使ったのだと考えます。
「5 Reasons iPad Pro can be your next computer」の意味
では何故,Appleは新型iPadProのPR動画で,
「5 Reasons iPad Pro can be your next computer」
という文言を使ったのか?
iPad Pro — 5 Reasons iPad Pro can be your next computer — Apple
本当にiPadProが,「Computerの代わり」になるということを伝えたかったのでしょうか?
答えは「NO」です。
確かに新型iPadProの性能は殆どのノートPCを凌駕しているのでしょうが,やはりiOSのタブレットという範疇を超えることはできません。
もちろん「文字入力」への要望に応えるためにキーボードも用意していますが,その点を中心にして考えられているデバイスではありません。あくまでも「おまけ」の部分です。
文字入力を重視しているのであれば,「どうぞMacを」というスタンスは,変わっていないのです。
それでも,Appleとしては,できるだけMacのような操作ができるように努力はしています。様々な要望を,最大公約数的に組み入れると,どうしても中途半端感が出てしまうのは仕方が無いことなのでしょう
しかし,決して「Mac化」させようとしているのではない。この点が非常に大事です。
というか,この点を理解して,我々が利用することが大事です。
新型iPadProのパワーは,そのアプリ対応からも分かる通り,写真,Graphic等,芸術的な分野で発揮させるためのものです。
それらの作業にはマシンパワーを要求されますし,ときにはApplePencilのようなスタイラスのほうがよりふさわしい作業効率を生むかもしれません。
つまり,「用途を選び,必要な方が購入して下さいね。でも,できるだけiPhoneやMacとの連動を考えた動作環境は整えますよ」というAppleからの提案です。
そして,先の動画内に,Appleの明確な答えが表示されています。
これです。
「Computerのようなものであるが,これまでのどんなComputerにも似ていない」
「新しい使い方を提案する新しい形のデバイス」
である。
パワーがあるからといって,キーボードが出ているからといって,すべてをこなすオールラウンダーだと勘違いしてはいけません。
すべてをiPadでこなそうとしてはいけません。
それが,iPadProの本当の姿なのではないでしょうか。