垣根涼介の「室町無頼」文庫化!
直木賞,芥川賞の発表が1/16日に迫っています。
今回直木賞の候補となっている「信長の原理」の著者である垣根涼介さんを推していることは,以前に書かせていただきました。
垣根さんについては上記の記事をご覧になっていただきたいのですが,ある程度のスパンで「書きたい内容」の柱を一本に絞り,ものすごい集中力で圧巻の作品を仕上げる作家さんという印象です。
そんな垣根さんの最近の「潮流」は,時代物。
しかも,確かな史実を基にしながらも,大いに「垣根流」のスパイスを効かせた本格的時代小説です。
さらに,それぞれの作品の主人公の考え方,生き方を主軸とした骨太なものであり,時代小説の舞台に新風を吹き込んでいるようにさえ感じます。
そんな垣根さんの時代物。
第1弾「光秀の定理」に続く第2弾,「室町無頼」がついに文庫化されます。
これ,明らかに「直木賞」発表の時期を狙ってますよね? 1/29日の発売です。
「室町」という時代選択がニクい!
この「室町無頼」。
描かれるのは,応仁の乱直前の無政府状態化していく京の都です。
幕府が幕府として機能しなくなっているこの時代,武家の出ながら牢人となった3人の生き様が,まるで匂い立つかのような濃厚さで描かれる本作。
浮浪300人を治め,ときには傭兵頭として,一方では都の治安を保つ目附職としてうごめく「骨皮道賢」。
芳王子という女性を介して道賢と知り合い,互いの志に共感し合うことになる「蓮田兵衛」。しかしこの兵衛は,堕落した幕府を蹴散らすためのきっかけを作るべく,農民を率いた土一揆を画策していくことに…。
そして,道賢に拾われ,兵衛預けられたことで一流の棒術を獲得することになる「吹き流し才蔵」。道賢と兵衛とが,互いに理解しつつも,それぞれの立場の違いから取り締まる側と一揆側とに別れることに戸惑いつつ,激動の時代を生きることになります。
そのどれもが,一般の知識では知るよしもない人物達です。
垣根さんは,史料に細かに登場するこれらの人物達の情報から,そのストーリーを肉付けして本作を完成させます。
「光秀」「信長」という,他の2作とは違い,室町時代という雲をつかむような空間を題材として選択し,さらには歴史上でいえば名もなき剣豪の生き様を描いたことに,大きな驚きを感じます。
また,そんな名もなき牢人達の生き様に深く陶酔させるだけの筆力。
3人の生き様自体が「生き死に」と隣り合わせだけに,他の2作とも全く似通っていない,強靱なまでの骨太さを感じる対策となっています。
「直木賞受賞」のお祝いとなるか?
発売させるのが,直木賞の発表後ということで,もし垣根さんが受賞したとなると,正に「受賞記念」ということになりそうなタイミングですね。
本作「室町無頼」自体も以前の直木賞の候補作。
垣根さんの歴史物が連続で候補になっているということは,その取り組み自体がおおいに評価されているということに違いありません。
是非とも「直木賞」をつり上げていただきたい!