久々の「有川節」を堪能!
有川ひろさんの最新刊,「イマジン?」を読了しました。
以前にもお伝えしていましたが,「有川浩」から「有川ひろ」へと改名してから初の長編。しかも,久々の単行本ということで,正に「待ってました!」という感じでした。
読了後の感想としては,
「いつもよりこってり目の有川節…」
というところでしょうか?
夢と信念と信頼と…
ストーリーとしては至ってシンプル。
映像制作に憧れていた主人公の「良井良助(いい りょうすけ)」が,先輩の誘いで参加することになった「殿村イマジン」での仕事の中で成長して行く物語です。
理想と現実とのギャップに悩み,苦しみながらも,「殿村イマジン」の社員,撮影現場のスタッフやキャスト等との密接な関わりの中で,成長していく良助。
しかしそこは有川さん。良助を中核としながらも,周囲の登場人物の心を深掘りすることを忘れません。それぞれの夢と現実,信念と挫折,それでも互いの信頼関係の中で前を見つめようとする力強さを見事に描いています。
「力強さ」「骨太さ」という点では,これまでの作品の中でも指折りの作品になっていると感じます。
さて,具体的な内容をネタバレしない程度に…。
物語は,良助が関わったドラマや映画の制作進行とともに5つの章に別れています。
第一章「天翔ける広報室」
ドラマ「天翔ける広報室」の制作。
有川ファンであれば,このドラマ名を見ただけで気付きますね。そう,有川さんの作品「空飛ぶ広報室」をまんま自らパクったようなドラマを制作するというお話。
大きな違いといえば,本来は新垣結衣さん演じる「稲葉リカ」がテレビ局の人間だったのを,本作では航空自衛隊の広報として描いていること。
また,ここで登場する「喜屋武 七海」という女優さんが,正にガッキーさながらの爽やかな女優さんとして描かれているのも「そのまま」です。もちろん本来の「空井大祐」役,「鷺坂室長」役にあたるキャストも登場するなど,有川ワールドが満載すぎます!
個人的にツボだったのは,「空飛ぶ〜」の鷺坂室長にあたる役として登場した「鷺沼室長」(名前も狙いすぎ!)が,部下の結構式で投げかける例の台詞。
「どんなに大喧嘩しても,翌朝は笑顔で送り出して上げてください」
ドラマのシーンとして,以前の作品の超重要場面を入れ込んでくるなんて,反則です!
「空飛ぶ広報室」を読んでいない方は,是非とも読んでいただきたい。
良助は,「映像制作」として現場を下支えすることの大切さや,現場を維持するためのテクニックを先輩との関わりの中から学んでいきます。
第二章「罪に罰」
映画「罪に罰」の制作。映画の主役は前作同様「喜屋武 七海」。
本章のテーマは「パワハラ」です。
映像制作に関わる様々な会社のそれぞれの立場。また,それらの会社の中での仕事の割り振り,分担,責任の所在…。
これらが適切に機能しないと歪みが生じます。会社としての機能を維持するために一部の社員に負担がかかったり,責任の所在があやふやになったり…。
そして生じる,妬み,そねみ,責任転嫁,時には意図的な悪意…。
これに,現場の責任者である監督やプロデューサーの横暴や理解不足が加わったら…という,映像制作の(どんな仕事でのあるのでしょうが…)闇の部分を描きます。
甘んじて受ける屈辱。それに対する意地と抵抗。当事者以外のスタッフの関わり。良助自身はもちろん,良助を取り巻く「殿村イマジン」のメンバー,そして俳優陣はこのハラスメントにどのように向き合うのか。
行き詰まる展開を味わってみてください。
この章でハラスメントの対象となる1人の女性プロデューサーが,今後の良助の運命を左右することに…。
あっ,それから,前章でも登場した大女優「喜屋武 七海」がまさか…という,夢のような甘々も用意されております。
と,ここまで感想を垂れ流してきましたが,非常に長文になってしまいました。
第3,4,5章の紹介は,次回へと繰り越させていただきます。