岡崎琢磨最新刊「鏡の国」、9月14日発売!
先日、垣根涼介さんが直木賞を受賞しました。
受賞作は「極楽征夷大将軍」。
ただこれ、私としてはこれまでの垣根さんの歴史物の中で最悪の出来…と評価したばかりでした。
垣根さんは何度も直木賞にノミネートされており、私からすると、
「順番待ちの出来レースか…」
と感じてしまいました。
垣根さんのこれまでの歴史物であれば、作品的に最も読み応えがあるのは二作目の「室町無頼」かな?
三作目の「信長の原理」も素晴らしい出来でした。ここでの受賞だったらすっきりしたのに…。
何だったら四作目の「涅槃」でも…。涅槃は少々色恋沙汰の部分で濃厚な描写が過ぎるかな…とも感じましたが、武将の心をえぐった…という垣根さんの醍醐味は十二分に楽しめるものでしたので…。
前掲のレビューでも書きましたが、受賞作の「極楽征夷大将軍」は、「単に歴史をなぞっているだけ…」という印象が非常に強いです。この作品で受賞では、「順番ありき…」と考えられても仕方ないかと…。
それはさておき…。
今夏は、私の押している作家さんの新作が非常に少なく、少々さみしい思いをしているところです。
そんな中でも、9月1日に三上延さんの「百鬼園事件帖」が発売されることは先日お伝えしました。
そして…。
9月14日には、「珈琲店タレーランの事件簿」シリーズの岡崎琢磨さんの新刊「鏡の国」が発売になります。
ごり押しなし…でお願いします!
「鏡の国」は、PHPから出る単行本ですね。
裏表紙の画像を見ると、本格的ミステリーの予感がします。
紹介文には、
大御所ミステリー作家・室見響子の遺稿が見つかった。
それは彼女が小説家になる前に書いた『鏡の国』という私小説を、死の直前に手直ししたものだった。
「室見響子、最後の本」として出版の準備が進んでいたところ、担当編集者が著作権継承者である響子の姪を訪ね、突然こう告げる。
「『鏡の国』には、削除されたエピソードがあると思います」———。
削除されたパートは実在するのか、だとしたらなぜ響子はそのシーンを「削除」したのか、
そもそも彼女は何のためにこの原稿を書いたのか……その答えが明かされた時、驚愕の真実が浮かび上がる。
反転、反転、また反転———!本気の「仕掛け」を堪能せよ!
とあります。
大御所ミステリー作家「室見響子」の遺稿である「鏡の国」。
その「鏡の国」には、意図的に削除されたエピソードがあるのでは…?
恐らくは、担当編集者と、響子の姪がその謎解きに行う…という進み方をするのでしょう。
作者である岡崎さんのメッセージの中には、
「見た目のことで悩み、苦しむ全ての人に、この物語を届けたいです。」
という文言があります。
響子は、見た目上のコンプレックスと闘いながら物書きをしていたのか?
一部分を「削除」する…という行動に、響子のどのような思いが隠されているのか?
自分を映し出す「鏡」をテーマにした遺稿だけに、非常に興味が湧いてきますね。
唯一注文を付けるとすると…。
岡崎さんの悪癖として、謎を回収するにあたり、非常に強引なやり口でことを済ませてしまう傾向が見て取れます。また、それが出ない作品もあるわけで、その辺が非常に安定しない作家さんでもあるのです。
タレーランシリーズも、その繰り返しであり、経験を重ねるごとに悪癖が無くなっていく…という代物ではないようです。
だとすれば…。
せっかく重厚なテーマになりそうですので、本作は読み手が納得できるようなエンディングを迎えることを強く願うばかりです。