碧野圭さんの最新刊「レイアウトは期日までに」がめっちゃよかった件について!
碧野圭さんの最新刊「レイアウトは期日までに」を読了しました。
正直、それほど期待はしていなかったんです。
というのも、最近は「凜として弓を引く」のように、ややターゲットの年齢層が低めの作品も多かったからです。
まあ逆に言えば、碧野さんの書く文章は実に多様で変幻自在…とも評価できるわけですが…。
「書店員と2つの罪」なんかは非常に硬派なヒューマンサスペンスとなっており、従来の碧野さんには無いタイプの作品ですし、「書店ガール」シリーズなんかは、碧野さんといえば…という女性目線によるお仕事小説。一般的にはこれが「碧野作品」の代名詞となるでしょう。
ただ、同じお仕事小説でも、「書店ガール」シリーズの文体はやや堅め。内容的にもよりシリアスな展開となっています。それに対して「駒子さんは出世なんかしたくなかった」などは、同じお仕事小説で切羽詰まったストーリーではあるものの、書店ガールよりは軽めの文体で書かれている印象です。
今回の「レイアウトは期日までに」。
これは正に後者のお仕事小説でしょう。
これは「書店ガール」並のシリーズ化を期待
ストーリーとしては、
出版社で首切りにあった「赤池めぐみ」が、同い年の気鋭の装丁家「桐生 青」のもとで働き出す…
という形で進んでいきます。
自分の実績に自信がもてない「めぐみ」。
才能に満ちあふれ装丁家としての評判はいいものの、人嫌いで社会人としての常識にうとい「青」。
立場が違いすぎる二人ですが、仕事をこなしながら互いをかけがえのないパートナーとして認識するようになる…というところで本作は終わっています。
事務所が軌道に乗り、いよいよ二人の会社として漕ぎ出そう…という流れですので、これはもう続編への期待しかありません!
ストーリーは主に「めぐみ」視点で語られていきます。
元の会社を追い出されるようになったのですが、青との事務所で元の会社から仕事をもらい、それまでの働きが無駄では無かった…と感じるめぐみ。
また、元の会社での人脈をベースにして、青の仕事の窮地を救うことも…。
さらに、最初はめぐみのことを仕事のパートナーとしては見ていなかった青が、めぐみの仕事ぶりを認め、会社を二人で立ち上げよう…とまで考えるに至る展開。
終盤で青が人嫌いになった理由も明かされ、ストーリーのメリハリもバッチリ。
碧野流の人たらし的な文章に、一気読みです。
読んでいて心が温かくなるというか、勇気をもらえる感じ…。
出版業界の専門的な事柄にも非常に興味が湧きますし、それを小難しく書かずに読み手につて得る「わかりやすさ」も碧野さんの武器ですね。
是非とも早い内に続編を!
また、本作を題材にしたドラマや映画などもおもしろそうです。
それほど生き生きとした作品に映りました。
お薦めの作品です!