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「珈琲店タレーランの事件簿」から見る,岡崎琢磨さんの伸びしろ

 先日,「ビブリア古書堂の事件帳」の最終巻が来月に発刊予定ということをお伝えしましたが,今回は似たようなタッチの作品,珈琲店タレーランの事件簿」の作者,岡崎琢磨さんのご紹介です。

 

「隠し玉」から感じる「伸びしろ」

 岡崎さんは,宝島社の「このミステリーがすごい!大賞」の最終選考に残った作品,「珈琲店タレーランの事件簿」で「隠し玉」として2012年にデビューされました。

 

 デビューの時期が,ちょうどビブリアが評判になっていた時期ですし,古書堂と珈琲店という違いはあるもの,「若い女性店主が謎を解き」「それを慕う男性との間でストーリーが展開する」という非常に似通ったシチュエーションだということもあり,岡崎さんにとっては逆風が吹いた時期もあったように感じます。

 

 また,内容に関しても,やや強引に謎解きを「作り上げてしまう感」が強く,ぎこちなさを感じされてしまうことがありました。

 しかし,タレーランシリーズも巻を重ね,その強引さも少しずつ丸みを帯びてきたように感じますし,徐々に主人公の2人以外の登場人物の生かし方も上手になっていると私は捉えています。昨年の11月に出版された第5弾は,これまでで一番読み応えのあるものになっていると感じました。

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 ここら辺に,無骨に自分のスタイルを貫き通しながらも,自力を付けている岡崎さんという作家さんの魅力を感じるのです。

 

真のデビュー作から見る多様性

 実は岡崎さんは,タレーランでデビューする前に,他の作品で角川書店のコンクールにも応募して最終選考まで残っていたようですが,その後に「このミス大賞」で受賞して…という事情があったようです。

 デビュー後,角川からその最終選考まで残った作品を出版しないかというオファーがあり,大幅な改訂を加えて出版したのが,「季節はうつる、メリーゴーランドのように」(2015)です。

 

 この真のデビュー作は,タレーランのようなライトノベルの王道を行くストーリーではなく,思いを寄せ合う一組の男女の,高校生から社会人になって自分探しをするようになるまでの長い期間を追った物語。

 もちろん2人の関係には深い謎が伏線として貼られており,なかなかはっとさせられる展開になっています。また,最後はややほろ苦のエンディング。私は,無理矢理謎を作る傾向のあるタレーランシリーズよりも,こちらの方が好みです。

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 この岡崎さんという方,「メリーゴーランド」のような筆の取り方をし,表現形態を広げていくと,大化けしそうな予感がします。「伸びしろ」を感じるんですよね。

 

最新作は…強引さの揺り戻しか?

 そんな岡崎さんの最新刊「新米ベルガールの事件録 チェックインは謎のにおい」が,幻冬舎より昨年の11月に出版されました。「幻冬舎」という会社は,非常に魅力的作品を多数出版しており,私は非常に評価している会社です。

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 ただ,この「新米…」は,「無理矢理謎を作り上げる」という岡崎さんの悪癖が強めに出てしまっていると感じます。幻冬舎サイドも,「岡崎さん=分かりやすいミステリーもの」という構図を意識してしまったのでしょうか…岡崎さんの多様性を感じている私としてはちょっと残念。タレーランシリーズ同様,今後の「伸びしろ」に期待したいところです。

 

 やや癖はあるものの,作家さんとしての成長を感じ取ることができる岡崎作品。是非手に取ってみてください。

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