果たして「フィッティング」で音質は改善されるのか?
名門ゼンハイザーが,満を持して投入した完全ワイヤレスイヤホン「MOMENTUM True Wireless」。
購入後のレビューを続けています。 前回書き忘れましたが,これまでの記事は全てiPhoneXSとの接続での話です。
前回は,「エージング」を大前提としてこの機種の実力発揮までをお伝えしました。
その中ではっきりと分かったのは,同じドライバーを搭載した名機「IE800」とは異なり,音の「立体感」「重み」「艶」が足りないという点です。
「解像度はそこそこあるのに,ここまですんなりとその音質に納得がいかない」
のは,音の軽さ,低・中・高音の階層性や立体感のなさが全ての原因です。
本当に平面的で「音楽」として楽しめない部分があるのです。
その点AirPodsは,解像感や煌びやかさは期待できないものの,何かか不思議な魅力があります。低音寄りで,ときにはブーミーにも聞こえるのですが,普段使いのワイヤレス機として考えれば,それなりに納得のいく「音楽」を聴かせてくれるイヤホンに仕上がっているのです。
音のグレードはさておき,私はAirPodsの音質は嫌いではありません。どんなジャンルを鳴らしても「破綻」がないのも,実はすごいことだと感心さえしています。
さて「MOMENTUM True Wireless」。
通常は「低音が足りない」となるとイヤピースの交換を考えますが,付属の「Lサイズ」とデフォルトの「Mサイズ」とのサイズ差が半端なく,Lではあまりにブーミーになって私の耳では到底使えませんでした。
何でこんなに大きさが違うのか,大いに疑問です。この中間のサイズを試してみたい気もあります。
というわけで,このMサイズのピースを活用して,フィッティングの工夫を図ることで,何とかならないか…というのが今回のテーマです。
これで満足できなければ,他のメーカーのイヤピースを試してみるということになりますが,これまでの経験と「MOMENTUM True Wireless」の大きめのボディーサイズからして,付属のMサイズよりも大きめだったり,ウレタン製の密閉性の高いものだと,音が籠もってしまう予感が大。
「純正のMサイズのままで何とかしたい!」
という思いで,色々と模索してみました。
密着を求め,「より奥に」という考え方
まずは,取説に記載されている耳への挿入イメージから。
前回も書きましたが,一旦挿入してから少し本体をねじ回してロックをかけるような感じです。
カスタムIEMではごく当たり前に行う装着方法であり,本体はカスタム製品ほど先端のカナル部分が曲がりくねっているわけでもありませんので,損着自体はそんなに難しくはありません。
ここで注意したいのは,カスタムと「MOMENTUM True Wireless」との回転装着の意味合いの違いです。
カスタムの場合は,そもそもイヤピースがありませんので,ひねりながら先端を耳穴にねじり混んでいき,本体を安定されるとともに,耳穴の奥までカナル部分の先を挿入する必要があります。
対して「MOMENTUM True Wireless」は,通常の挿入のままだと本体が安定しないため,本体を耳内にロックするための回転です。
カナル部分にはイヤピースが装着されていますので,耳穴の奥には入りません。
ということで,私の耳においては,「MOMENTUM True Wireless」のイヤピースと耳穴との密着が不足していたのだと考えられます。
かといって,Lサイズのイヤピースでは低音ブーミー…。
そこで,もう少しカナル部分を耳穴に深く差し込むことができないか試してみることにしました。
「挿入の深さ・角度」がキモ!
先の「装着イメージ図」では,本体を回転されるときには「フラット」な方向にただひねっているだけです。
しかし,これでは耳穴とイヤピースの密着が足りないのです。
だからこその「重厚さ,立体感の不足」です。
そこで,本物のカスタムIEMの装着のときのように,
「耳たぶを下に引っ張りながら,イヤピースを耳穴に向かって斜め方向に深めに挿入」
してみました。
「深め」とはいっても,カナル部分が長いわけではありませんので限界はありますが,それでもイヤピースが耳穴に密着した感じを受けます。
以下の2枚の写真。
上が通常装着。下が深めに装着した場合。
本体シェル部分の角度が結構変わっていることが分かると思われます。
この状態で聴いてみると…。
!!!
なんと,これまで決定的に不足していた低音が補完され,その低音が全体の下支えとなって,大幅に「立体感」が向上しました。
驚くほどの違いです。
しかも…。
普通,イヤピースを密着させすぎると,だらしない低音が広がってしまうものですが,この機種はカナル部分が短く,しかもイヤピースのサイズが小さいため,過度に耳穴との接触が生まれず,解像感を損なわずに,立体感と適度な低音の増加が見込めます。
また,これまで定まっていなかった,音の「定位」が飛躍的に向上しました。
この状態であれば,「十分合格」です!
これまでのワイヤレスとは一線を画す解像感。
必要十分な音場。これに関しては「とてつもなくいい」というレビューも散見しますが,「普通にいい」という感じです。昔の「10Pro」のような絶対感はありません。
強調されすぎない低音が丁度いい感じになり,中・高音を支える感じも良好。
ただし,相変わらず高音のシャリ付きは見られます。こちら方面の煌びやかさは,あまり期待できないと思った方が良さそうです。
また,楽器数が多くなったり,ロック調の激しい音楽を鳴らしたりすると,その分解能の限界を割と早く露呈する傾向はそのまま残っているようです。
にしても,これが「完全ワイヤレス」で手に入るのであれば,今までに無い世界に突入できる予感がします。
他の皆さんのレビューで,初聴きで「素晴らしい」と感じられた方は恐らく,「耳との相性」がかなりよかったのでしょう。
私のように「低音不足」「音のつながり」」「定位」「立体感」等に疑問を感じられた場合は,恐らく原因は「装着」にありです。
「ねじ込み方」「ねじ込みの深さ」等,自分の耳に会う装着の仕方を探ってみることを強くお薦めいたします。

ゼンハイザー Bluetooth 完全ワイヤレスイヤフォン MOMENTUM True Wireless 【国内正規品】
- 出版社/メーカー: ゼンハイザー
- 発売日: 2018/12/20
- メディア: エレクトロニクス
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音質についてまずまずの結果が出て,本当にほっとしています。
…と,この記事を書きながら更にエージングを進めること20時間。
さらにとんでもない音質の変化が起こっています。驚きです!
次回は「音質最終評価編」。
乞うご期待!