「麦本三歩の好きなもの 第二集」読了!
住野よるさんの最新作,「麦本三歩の好きなもの 第二集」を読了しました。
言わずとしれた「麦本三歩の好きなもの」の第2弾となります。
前作は,図書館で働く二十代のゆったり系女子「麦本三歩(むぎもとさんぽ)」の12の日常が描かれた作品でした。
「小説幻冬」の連載と書き下ろしによるものでしたが,作者の住野さんの思考が次第に固まってくる様子がはっきりと見て取れるのがとても興味深かったのが印象的でした。
どういうことかというと,前掲の記事内でも書いたのですが,執筆の時系列で並べた際,後に書かれたものほど作品としての出来がいいのがはっきりしているのです。
恐らくは,漠然と「麦本三歩」のキャラクター設定はできていたものの,物語全体の構成や,三歩と周囲の登場人物とをどのように絡み合わせるかを試行錯誤したことで,作品の質が上がってきたのではないでしょうか?
実際,初期の作品は三歩の主義主張や行動を坦々と描いていることが多く,読み応えはありません。しかし,途中から魅力満載です。キャラの濃い先輩達,訳ありの友人達との絡みを住野さん独特の絡みつくような表現で描くとともに,自己肯定感の低い三歩なりの葛藤や前に進もうとする気持ち,ゆったり系だからこそ「じっくりと」自分自身や周囲の人達のことを考えようとする姿勢などが絶妙なタッチで表現されていくことになります。
そして,噛み噛みの三歩宜しく,言葉遊びが全開。
特に後半のに向けてのテンポも良くなり,私としては住野さんの新機軸として,高く評価している作品です。
その第2弾ということで,否が応でも期待が高まります!
会心作! 2021年のトップは決まりか?
読了して…。
一言で本作を表現するとすれば,
「会心作」
です。
何だったら,2021年のトップは決まりか…と考えたくもなるほどの作品だと思います。
個人的には,住野作品の中では『か「」く「」し「」ご「」と「』が最も好きな作品ですが,それと同等レベルで評価したい作品です。
明らかに,「第一集」よりもストーリーの質が上がっています。
前作の後半で掴んだ,「麦本三歩の魅力の引き出し方」が,収録されている12作品全てに踏襲されています。
「三歩の心の中のこじれまくった思考」を巧みにしかもねっとりと表現し,「周囲の人と関わることでの成長」をテンポ良く描くとともに,「最後には誰もがホッコリとした気持ちになる」展開を用意する…。
これに,もう至る所に散りばめられた「言葉遊び」。
読みながら,何度声を上げて笑い,吹き出したか分かりません。
過去を思い出しても,こんな経験はない…というくらいに,笑えて,感動するショートストーリーが詰め込まれています。
もう,安定の「型」が出来上がっている印象。
「麦本三歩シリーズ」は,恐らく今後も続きますね。
断言していいだけの魅力的なシリーズに,2作目にして仕上がっていると思います。
ドラマ,映画化にも期待したい!
詳しいストーリーの一端を紹介しようかとも思いましたが,あまりに作品が素晴らしく,しかも一つ一つの言葉が生きている作品ですので,今回は全体像の紹介だけに敢えて止めます。
皆さんには,是非ともその「笑い」「感動」「ホッコリ」を体験していただきたい!
本作も,「真面目な新人」「うるさい友人」「銀髪の隣人さん」「三歩の家族」等,魅力的な人物が登場します。しかし,図書館の「優しい先輩」「おかしな先輩」「怖い先輩」は健在ですし,前作でキュンとさせてくれた「美人な友人」も再登場します。
恐らくは,前作を読んでからの方がストーリーにどっぷりとはまれるはずです。
まあ,後読みでも十分でしょうが,恐らく,もう一度本作を読んで,流れを確認したくなるかも…。
本作は,登場人物にも数々の変化が訪れます。
三歩のロマンスにも注目です。
あっ,「麦本三歩の好きな音」として,麦本三歩が聴いている楽曲を収録したコンピレーションCDも発売されるようです。併せてご紹介させていただきます。