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「ビブリア古書堂の事件手帖III ~扉子と虚ろな夢~」レビュー〜いよいよ「扉子メイン」の幕が切って落とされた!〜

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「ビブリア古書堂の事件手帖III ~扉子と虚ろな夢~」読了

 三上延さんの最新刊、「ビブリア古書堂の事件手帖III ~扉子と虚ろな夢~」を読了しました。

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 ビブリア古書堂の「第2シリーズ」の第3弾。
 「第1シリーズ」の7巻は、副題が全て「栞子さんと〇〇」であることで分かるように栞子と大輔の物語です。

 そして「第2シリーズ」は、ここまで「扉子と〇〇」という副題が付いているように、2人の娘である「篠川扉子」の物語。

 栞子と大輔が結婚したのが「2011年10月」であり、第2シリーズでは扉子が高校生となっていることから、「2030年頃」の物語であるということは、これまでの記事でまとめております。

 そして、本作は扉子が16歳(高校2年生)の4月の物語ということが記述から読み取れました。

 そう、本シリーズは、「篠川家の時間旅行」を楽しむシリーズでもあるのです。
 これまでの第2シーズン「Ⅰ」「Ⅱ」では、6歳、小学3年生、高校生の扉子が描かれました。この段階で正に時を縦横無尽に駆け巡ったストーリーになっているわけで、これまでシリーズを読んだことがない方は、全てを読破することで本作がますます楽しめること請け合いです。

 さて、これまでの2巻は、扉子が大輔から過去の話を聞くという形式をとったり、栞子が中心となって事件を解決するそばに扉子がいる…というように、シリーズ2の主役である扉子メインの展開とはなっていませんでした。

 シリーズⅢとなる本作で、「扉子の立ち位置」に変化はあるのか?
 期待を込めて読み始めました。

 

主役は扉子、謎解きは栞子

 本作「ビブリア古書堂の事件手帖III ~扉子と虚ろな夢~」は、とある古書店の跡取り息子に残された約千冊の蔵書の行方に絡むミステリーです。

 その息子「樋口恭一郎」と母親、無くなった父方の祖父との思惑が絡み合い、古書の即売会を舞台にしてとある事件が起こり…という流れでストーリーが展開していきます。

 当然その即売会にビブリア古書堂も参加しており、扉子と恭一郎のやり取りを中心にして中盤まで進んでいくのですが、これまでのシリーズⅠ・Ⅱよりも明らかに扉子登場のシーンが多く、事件に直接巻き込まれていくことになることからも、いよいよ本作の主人公は扉子…と明言できる展開になってきました。
 Ⅰ・Ⅱはプロローグだった…というところでしょう。

 そして、筆者である三上さんがうまいのは、この扉子の活躍に、栞子、大輔、栞子の母智恵子のしがらみを実に巧みに絡みつけていることです。
 新シリーズなのですが、物語のベースは全てシリーズ1にあり…。この状況設定が、ますます扉子が篠川家の血を引くキャラクターであることを印象づけることに役立っていました。

 そして、本作の特徴は、
「事件に主だって関わるのは扉子だが、謎解きを行うのは栞子」
という設定です。

 扉子は当然のごとく、本の虫で観察眼が長け、勘が鋭い…という栞子ばりの能力を発揮するのですが、そこは手練れの栞子には適わない…という設定。
 実際の謎解き部分では扉子が自らの限界を悟り、栞子に託す…という展開になります。

 恐らく、今後シリーズを重ねることで扉この更なる才能が開花し、栞子に迫るほどの探究眼を発揮するような成長を遂げていくのではないでしょうか?
 この扉子の「伸び代」を残しているあたり、三上さんの戦略の巧みさには舌を巻くばかりです。

 

今後は智恵子の暗躍ぶりが鍵を握る?

 そして非常におもしろかったのが、実のこの「虚ろな夢」の「事件手帖」は智恵子がしたためる備忘録だった…ということです。
 1巻目の「扉子と不思議な客人たち」では、父大輔が書いた「事件手帖」から過去の事件を聴き取る…という展開でしたが、何と智恵子も自分のイメージに合う「事件手帖」を作成していた…という衝撃の展開。

 そして、思い通りにならなかった娘栞子の代わりとして、孫の扉子に目を付けているようだ…という伏線もあり、今回登場した恭一郎をも巻き込もうとしている…ということを匂わせたエンディングとなっていました。

 シリーズ2の今後に向けて、餌をばらまき散らかした感がありますが、シリーズ1との繋がりも破綻が無く、シリーズ物の魅力を最大限に活かした構想を練っているようで感心しました。

f:id:es60:20220331094152j:plain 前段で、ビブリア古書堂シリーズは「篠川家の時間旅行」を楽しめる…と書きましたが、これは三上さんももちろん認識しており、あとがきでは次回作では「栞子の過去の話も書きたい」と明言しています。

 恐らくは今後も「高校生の扉子」を中心に、過去や未来を飛び回るようなストーリーが展開されていくのでしょう。
 個人的には、「栞子と大輔」と似たような関係性を匂わせる「扉子と恭一郎」の今後も気になりました。

 「4作目」が今から楽しみです。

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