いよいよAppleのインド戦略が始まる?
中国の安価な労働力と購買力は、これまでのAppleを支えてきた…といっても過言ではないはずです。
チップ性能を下支えしてきたのが台湾のTSMCであるなら、大量の生産を可能にし、それらの消費の受け皿ともなっている中国は、Appleにとっておいしい存在だったに違いありません。
しかし…。
中国の経済発展に伴って米国との利害の不一致が目立つようになり、「経済戦争」ともいわれました。
また、中国の経済発展に伴って労働者の賃金も上がり、もはや中国の労働力は「安価」とは言えなくなってることでしょう。
そこにダメを押したのが「コロナ禍」。
大量にデバイスを生産しなくてはならないAppleとしては、生産拠点が一極集中していては何らかの有事の際に危険…ということはこれまでもいわれていたことですが、正にそれが的中してしまいました。
一時はベトナム等東南アジアが「ポスト中国」の有力候補だった時期があるようですが、最近ではインドに向けて舵を切り始めたように見えます。
生産工場、Apple Store… Appleの本気を感じる
記事によると、
〇TataグループによるWistronのインド工場買収が合意に近づいていると、Bloombergが報じた。早ければ、TataグループはWistronのiPhone製造工場を2023年3月末までに引き継ぐ
〇Appleはインドに、同社初の直営店であるApple Storeをオープンする準備を進めているようだ。米メディアThe Vergeが、Appleが自社の採用ページにおいて、求人を開始していることを発見、報告している
ということです。
これまでもiPhoneSEを中心に、少しずつインド内でiPhoneの生産拠点づくりを進めてきたAppleですが、これまで以上にインド内に生産工場を設ける動きが進むのであれば、一気にインドへの拠点づくりを進るつもりなのかもしれません。
これまでの中国のように「殆ど全て」ということは無いでしょうが、少なくても「生産拠点の分散化」を意識的に狙っていることは明らかです。
また、今後の中国との付き合い方を考えたときに、
「今後の生産の中心をインドへと移行させていこう」
とする動きが強まってもおかしくはないはず。
この動きが果てしてどの程度のスピードで進むのか…という点に非常に興味があります。
一度始まったら、それこそ「堰を切ったように…」ということになっても不思議で気は無いかと…。
また、これまで存在しなかった「Apple Store」建設の動きは、生産の拠点だけではなく、これからはインド内でのiPhone販売に本腰を入れていく…というAppleの姿勢の表れであるはずです。
経済的な状況により、これまでインドでは安価なAndroid機のシェアが圧倒的だったと聞きます。
そこに本格的に参入しようというのですから、「じっくりと市場の成長を待つ…」という悠長な姿勢ではなく、
「生産拠点で大量に人身を雇い、実店舗も設置することでApple、iPhoneへの心の敷居を下げていく」
という狙いを、早急に達成しようといているように、私は感じるのです。
さて、中国はどう出る?
少子化、経済成長の落ち込み等、中国の将来は決して明るいものばかりではないはずです。
ここに、Appleの「脱中国」の動きが本格化することになると、恐らくは他の多用な国々、多様な業種の生産拠点さえも、新たな動きを見せるようになるのでは…?
さて、そうなったときに中国はどのような姿勢で臨むのでしょうか?
あくまでも自国優先を貫き、去る者は追わず…なのか?
それとも、他国との調整を図ろうとするのでしょうか?
私はもはや前者の立場を変えることはできないのでは?…と感じます。
超大国となった中国、また、それに立ち向かう米国および米国の巨人達の今後はどのように移り変わっていくのでしょうか?