お前さん,どこまで進化を続ける気?
前回まで,
「箱出し直後ではスカスカの音でしかないこと」
「数時間刻みで音質に変化が見られてきたこと」
「10時間程度のエージングで期待の音に近づいてきたこと」
をお伝えしてきました。
ある意味,「MOMENTUM True Wireless」と同じダイナミックドライバーを搭載したかつての名機「IE800」での経験を元にした自分なりの予想が,ここまでピタリと当たっていることになります。
それでですね…。
これもこれまでの経験上,10時間程度で大体のイヤホンの素性がわかり,そこから「急激」な変化は起こらないわけです。
もちろん徐々に…ということはあるでしょうが,そうなると自分の耳の「慣れ」という部分も出てきますので,非常にあやふやになってくる部分でもあります。
しかし,今回の「MOMENTUM True Wireless」。ここからがスゴイ!
私も全く初めての経験ですが,昨日の「レビュー③」の記事を書きながら更にエージングを進めると,
「10〜15時間の間に,とてつもなく大きな音質変化の山」
がもうひとつ現れました。
…お前さん,どこまで進化するつもりなんだね?
「MOMENTUM True Wireless」本性を現す
「レビュー③」でも書きましたが,エージング10時間でもまずまずの及第点ではありましたが,不満もありました。
それは,音の「立体感」「艶・深み」「定位」という部分。つまり,まだこの時点では音が平面的で雑然としており,「ときめきのない音」なのです。
この点を「耳への装着の仕方で補おう」としたのが「レビュー③」のテーマ。これ,なかなか効果的でした。
しかしです。
更にエージングを重ね,15時間ほど経過した時点で聴いてみると…。
正に「耳を疑いました」。
5時間前に聴いたイヤホンとはまるで別物なのです。
何が違うのかというと…。
①音に厚みが出ている
これまで「平面的」と感じる部分が劇的に改善され,全域にわたって「厚み」が加わっています。全域にわたってという部分がキモで,そのため,低・中・高のつながりも向上しています。
この部分,「IE800」のストレスのないふけ上がりを思い起こさせるものです。もちろん低音沈み込み,高音の果てしない伸びはかなり劣るのですが,なんせ「MOMENTUM True Wireless」はIE800の半値で,しかもワイヤレス。
ある意味驚異的ともいえましょう。
②「艶」「深み」まで出てきた
①の「厚み」の恩恵でしょうか,音の下支えする土台部分がしっかりしたことで,音に「艶」「深み」のような色気が出てきました。
これ,本当にエージング10時間の時点では決定的に不足していた部分です。これだったら,ワイヤレスという気軽に聴ける状態で,純粋に「音楽」を味わうことができます。
③「定位」がしっかりしてきた
これまで平面的な音だったが故にどうもしっかりしていなかった音の「定位」が中央部分に定まりました。これまでのような不安定さが「皆無」です。驚き!
実力を出した「MOMENTUM True Wireless」,自分の本当に真正面に音の中心があり,非常に落ち着いて聴けます。素晴らしい。
ボーカルは遠すぎず,近すぎず,正にベストポジション。上下左右の音場感も,きっとこれで違和感を感じる人はいないだろう…と思わせる完璧ぶりです。
普通はどこかに偏りがあるものですよね。
ボーカルが近すぎて奥行き感がない,やや上方から音が来るので違和感がある…等々。そのような部分が全くなく,自分を中心にして実にバランスよく音に囲まれている感じがします。
④「分離」も向上が見られる
この点は,上記3点から比べるとまだ課題は残る部分ですが,多数の音が混在するような曲での各要素の「分離」が向上してきました。
これまでは雑然と混在するように鳴っていた音が整理され,一つ一つの要素が聴き取りやすくなりました。
しかし,まだまだ埋もれてしまっている感じは強く残っていますので,今後のエージングで更に改善が見られるのか,それともここら辺が限界なのか…というところを今後見極めていく必要があります。
結論→音楽の「鑑賞」にも耐えうるワイヤレスである
ついにその音質に関する結論です。
ただし結論を見いだすまでには,以下の2つの絶対条件があります。
①少なくとも20時間のエージングをしてから判断すること
②耳への装着(挿入)方法を吟味すること
結論
・中音を中心としたフラット系の音質である。
・ゼンハイザーの機種としては珍しく,低音は目立たない。
・高音はエージングが進んでもシャリ付き気味である。それでもまずまずの伸びを見せる。
・解像感はワイヤレスの中では相当に高い。
・上下左右の音場感のバランスが実に素晴らしい。密集しすぎたり,離れすぎたりということに関して気を遣うことは皆無。
・IE800直伝のダイナミックドライバーが,BAでは味わうことのできない音の繋がりを表現する。
・ロック調の曲,ガチャガチャとしている曲では,音の分離感に不満が出るかも。(今後のエージングで改善する余地あり)
・逆にしっとり系の曲が非常に強い。艶や色気まで感じる。「藤原さくら」「上白石萌音」のように,アコースティック系,女性ボーカルをじっくりと聞くのに最適。(他のジャンルはあまり聴けていないので,他がダメというわけではない)
★恐らく現状の完全ワイヤレスイヤフォンの中では最高の音質を誇る。
★音楽を分析的に「鑑賞する」ことにも耐えうる
以上。
総じて言うと,
「買ってよかった!」
となります。
満足度はこれまで購入した星の数ほどのイヤホンの中でも相当に高いですよ。
心からお薦めします!
音質面に一区切りつきましたので,次からは「使い勝手」の面についてレビューを継続してきたいと思います。