「天国と地獄」の異様さが際立つ!
2021年第1クールのドラマが,一巡しましたね。
先日は,さすが「ドラマのTBS」と言うことでくくりました。
そんな中でも,「1時間枠ドラマの硬直化」を問題視したわけですが,そんな懸念を吹き飛ばすような破天荒なドラマが注目の的です。
そう,TBSの「天国と地獄〜サイコな2人〜」。
警視庁捜査一課の刑事と,連続殺人犯の容疑者とが入れ替わってしまう…というとんでもない展開のストーリーです。
「入れ替わり」はお約束の「階段落ち」…という流れは,もはや「敢えて狙った」という感じでしょうか? 視聴者は「転校生か!」と総突っ込みを入れたはずです。
視聴率も,今クール最高値をたたき出していますね。
というか,個人的には2話目で2%以上低下しているのがかなり意外でした。
1話最終場面,入れ替わり後の綾瀬はるかさんの壁ドンからの威圧的な言動は,久しぶりに背筋がぞっとするほどの衝撃を受けました。横ばいか,もしかすると上昇も…と考えていただけに,肩透かしを食らったような印象です。まあ,それでも高値安定で推移すると思います。この内容ですので。
役者の演技力と脚本の巧みさ
さて,この「天国と地獄」の最大の注目ポイントは,なんといっても綾瀬はるかさんと高橋一生さんの「怪演」ともいえる演技力です。
綾瀬さんがあれほどの殺人鬼の迫力を出せるとは思っていませんでしたし,高橋さんがあれほどの「乙女感」を出せるとも…。
綾瀬さんのドスのきいた声,冷酷な雰囲気を醸し出す仕草…。これまでに見たことがありません。「背筋がぞっとする」と書いた感覚は,綾瀬さんの豹変ぶりから来ています。
高橋さんの「乙女感」は,その芸達者ぶりから幾分か納得できる要素を見いだすことができますが,細かい「仕草」への心配りは予想を超えて,「お見事!」と言うしかありません。第一話の入れ替わり直後,ベッドから起き上がるシーンの下半身の運びを見ただけで,役への入りぶりが分かったくらいです。
2人の芝居を観るだけでも,「価値あり」と断言できる貴重なドラマとなりそうです。
さらに…。
今回脚本を手がけている「森下佳子さん」がやはりただ者ではない!
これまで,「世界の中心で,愛を叫ぶ」「白夜行」「わたしを離さないで」「義母と娘のブルース」等,TBSで綾瀬さんのドラマを担当していただけあり,綾瀬さんの活かし方を熟知していますね。それにしても,この森下さん,TBSとNHKでの仕事が非常に多いんですね。
今回の「天国と地獄」での「入れ替わり」。下手をすると,それこそ使い古しのアイデアになってしまっていたはず。それを,良極端な人物設定とすることで,「古さを感じさせない」演技へと繋げいるのには脱帽ですね。
深刻なストーリー展開の中にも「クスッ」と笑える言葉のチョイス。そして,弛緩させた空気感の中で急激にぶち込んで来るクレージーな展開。第2話でも,互いに疑心暗鬼になっている折りに,ピーナッツアレルギーの日高(彩子の感情)に敢えてピーナッツを食べさせて支配していく彩子(日高の感情)の描き方には震えました。
正に役者と脚本家の最強タッグという印象です。
今後の展開が楽しみでしかない!
今後は恐らく,北村さん演じる「河原」が,2人を追い込んでいくシーンが描かれていくのでしょう。北村さん,相変わらず演技が「濃い〜」ですね。
それを入れ替わった2人がどのようにしのぎ,そしてどのような結末へと繋がっていくのか…?
最終話に入れ替わりが解け,日高が逮捕…などというありきたりなゴールは,恐らく用意されていないでしょう。ハラハラする展開が続いた後に,誰もが予想だにしないラストへと繋がっていくはず。
また,彩子宅に居候する「陸」が,彩子と入れ替わった日高とどのように対峙していくのかが,鍵になるような予感がします。
もはや今クールの代表作となることは確定的な内容の「天国と地獄」。演者や脚本家の力と企画力で話題をかっさらっていく,TBSの底力を感じさせられます。