カスタム/CUSTOM/でいこう😎

50おやじが,お気に入りについて気ままにつぶやくページです。

夏川草介「臨床の砦」レビュー〜届け! 命がけでコロナに対する医療従事者の真実 みんな,自制しよう!〜

f:id:es60:20210425173642p:plain

夏川草介さんの最新作「臨床の砦」読了

 夏川草介さんの最新刊,「臨床の砦」を読了しました。 

 間違いなく,今すぐに,全ての国民に読んでもらいたい「ドキュメント小説」です。

f:id:es60:20210425164849j:plain

 テーマはもちろん「コロナウイルス」。
 長野県の田舎の町で,コロナウイルス対応の最前線に立つ「信濃山病院」の医師達の物語です。

 「病床使用率〇〇%」「医療崩壊寸前」「医療従事者の疲弊」等,連日ニュースで報じられています。
 折も折,3回目の緊急事態宣言も発令された地域もあります。

 しかし,我々はどうしても「現場」のリアルをなかなか実感できないでいます。
 また,「危機感が薄れてきた」とうそぶき,
「緊急事態宣言なんか出しても意味ないんじゃない?」
「我慢したって同じなんだから,オレは外で酒を飲むよ!」
などと,無責任な発言をする若者も増えているようです。

 今一度,コロナウイルスの恐ろしさを感じるとともに,人知れず,しかし確実に,命を賭けて治療に当たっている方々がいらっしゃることを,思い起こさなくてはなりません。

 我々には,現実的な「想像力」が必要なのです。

 

「負け戦」でも退かない(退けない)

 本作は,「信濃山病院」の中堅消化器内科医である敷島を主人公に,専門外でありながらコロナ対応の最前線に立つ医師チーム,看護師の奮闘を描いた,正に「ドキュメント小説」です。
 著者の夏川草介さん自身が,長野県で医療に従事する現役の医師であり,これまでも「神様のカルテ」シリーズなどで,重みのある医療系小説を手がけているということで,私も今最も好きな作家さんの一人です。筆力の向上も著しいですし。

 しかし,この「臨床の砦」は,これまでの「小説」とは一線を画す書き味です。
 もちろん,これまでの小説も,現役の医師の視点から生々しい描写が大きな特徴となっていたのですが,本作はその「重み」が違います。
 正に医師・看護師の「命のやり取り」が描かれています。

 小説として描かれているのは,「令和3年の1月」です。つまり,第2回の緊急事態宣言が出される直前の話。宣言が出された都市部ではない,長野県でのストーリーなのですが,
「長野県でこの状況であれば,東京では…」
と,考えずにはいられない逼迫した展開が続きます。

 基幹病院となった「信濃山病院」でも,当然コロナ患者の受け入れ,治療方針に対する各医師の考え方は様々。チームを束ねる者,中堅としてフル稼働する者,若手,看護師,その他の同じ病院に勤務していながらもコロナに直接関わらない立場の医療従事者…。
 この,「同じ病院内でも方針が定まらず,自転車操業が続く感じ」が,生々しいばかりに迫ってきます。

 そして,行政との意識の乖離。
 もちろん,一般市民との意識の乖離。
 それを感じながらも後には引けない医療チームの焦りと葛藤。

 急速に完全が広がり,医療崩壊を起こしながらも前に進まなくてはならない状況の中,敷島は,
「この戦,負けますね」
「しかしそれでも退かない」
と語ります。

 医師として,自らも命の危険を感じながら,そして,家族の命や家族への誹謗中傷に対する恐怖を感じながら…。

 

想像力を働かせよう!

 3回目の緊急事態宣言が発令になりましたが,それでも医療は動いています。
 今我々に必要なのは,想像力を働かせること。

 いま,医療従事者がどんな思いで働いているのかは?
 自分が動くことで,自分が,そして家族が,感染の危険に去られるかも…。
 もし自分が原因で,誰かに感染させてしまったら…。そして,その方が回復できずに命を落としてしまったら…。

 本作には,コロナが原因でなくなり,見取りもされずに荼毘に付される事例が多く登場します。そして,それに対する家族の無念も描かれます。たった2週間前とはまるで違ってしまった未来…。

 今,我々は正に不要不急の外出は避け,外での飲酒などは厳に慎むべきです。
 これだけ騒ぎになっているのに,大人数でパブリックの場での飲酒をしている人々がいることには,悲しみしか感じません。

 自分自身の行動が,人を傷つけてしまうことがある…という想像力だけは,人として持ち続けなくてはならないと思いますし,そのことが医療従事者の助けに繋がることも想像しなくてはならない時期だと考えます

 個人的には…。
 休日等,本当に外出しておりません。
 万が一コロナに感染したとしても,
「できるだけのことは確実に行った。100%そう言い切れる!」
と胸を張って言える生活を送りたいと心がけています。

 ワクチン接種が行き渡り,状況が落ち着くまで…。
 あと1年はかかるのでしょうか?

 本作は,こんな苦しい時期でも頑張ろう…という勇気をくれる必読の書です。
 自信をもってお薦めします!