DAPの素性をさらすIE900
ゼンハイザーから6月1日に発売されたフラッグシップイヤホン「IE900」のレビューをしています。
これまでは「到着編」「取って出しの音質編」を書かせていただきました。
以前のセンハイザー機とは異なり,エージング前の「取って出し」の音も高い実力を示したことは「取って出し編」でお伝えしました。
今回は,その試し聴きの中で強く感じた印象についてまとめたいと思います。
それは,DAPとリケーブルの違いによる音質差についてです。
「上流」の品質差がIE900の音に大きく影響する!
まずもって,「試し聴き」で用いたのは以下の3通り。
①Mac Pro→TEAC「UD-505」→4.4㎜バランス
②Astell&Kern「KANN-ALPHA」→4.4㎜バランス
→3.5㎜アンバランス
③iPhone11Pro→「Lightning−3.5㎜」ドングル→3.5㎜アンバランス
まずは4.4㎜での「UD-505」と「KANN-ALPHA」の違い。
「UD-505」が最強です。低音−中音−高音のバランスが本当に素晴らしく,もちろんIE900の最大の特徴であるボーカルも美しく響きます。
派手さや特筆すべき極端に目立った点はありませんが,音楽全体としての完成度は間違いなく高い音。ヘッドホンである「HD820」がもつ音場の広さ・立体感に関してはイヤホンの限界を感じますが,そこに目を向けなければ,イヤホンにこれ以上を求めるのは酷だろう…とも思える,ひとつの到達点だと考えます。
また,前回も書きましたが,恐らく最近のゼンハイザーフラッグシップ機は,敢えて一部が目立つような調整をせず,「フラット系リスニング機」といえる立ち位置を目指しているのだと考えます。だからこそ,レビューでは「つまらない…」と書かれることもあるのでしょうが…。
そして「KANN-ALPHA」。
「UD-505」で感じた「バランスの良さ」が崩れ,中・高音寄りの音へと変化します。中・高音の煌びやかさが非常に印象的で,この音が好き…という方も当然いらっしゃるでしょうが,トータルで見ると「UD-505」の低音の豊かさが消えているのがはっきりと分かります。
量的にも格段に減っていますし,ボワボワしたようなしまりのない低音に変わっているのです。
単純に高音寄りの音を望むのであれば,何もセンハイザーを選択する必要は無いわけで,「フラット系リスニング機」とはいえ,やはり質の良い低音が,センハイザーの音の根幹であることは変わりありません。
ここから分かることは,この「IE900」は,DAPの性能を容赦なくさらし出すほどの再生能力があるということ。性能的にもそうですし,恐らくDAPの相性もなかなかにシビアになってくるのかもしれません。
まあ,KAANの音も,据え置きUSB-DACと比較すれば…ということで,十分に満足できる音ですが…。
そして,もうひとつの観点はケーブルの選択です。
驚くほどに性能差を感じたのは,「KANN-ALPHA」で4.4㎜バランスケーブルと3.5㎜アンバランスケーブルの聴き比べをしたときです。
4.4㎜に関しては,前述のように,やや高音寄りに傾きますが,なかなかに優秀な音。
しかし,3.5㎜に換えると,全体の解像感がガクンと急激に低下し,「本当に同じDAPなの?」と疑ってしまうくらいに音質が落ちました。
これまでにも,端子ごとの聴き比べをしたことは何回もありますが,こんなにも音の優劣がはっきりとしたことはありませんでした。
IE900は,「上流を選ぶイヤホン」だと思います。
恐らくはバランスケーブルを利用することが望ましいでしょうし,DAPの性能もできるだけ高いものの方が後悔しないのではないでしょうか?
だが… 意外に戦えるiPhone11 Pro 何で?
しかし,非常に意外なことも…。
iPhone11 Pro→「Lightning−3.5㎜」ドングル→3.5㎜アンバランスで聴くと,結構悪くないのです。
全体的に痩せた音になり,深みや余韻のようなものは消えますが,低音−中音−高音のバランスは非常に良好で,そこそこの解像感も残ります。KANNに3.5㎜ケーブルを挿して聴いたときに比べれば,私は断然iPhone11 Proの方が好みです。
ちょっと謎です。
これ,Apple Musicがロスレス対応すると,どれだけ音質が向上するかが楽しみになってきました。ドングルを利用すると「ハイレゾ」は無理ですが,「ロスレス」は対応になるようです。KANNのApple Musicアプリは,いつハイレゾ対応のバージョンが対応になるのか不透明ですので(KANNレビュー参照),もしiPhoneが化けるようなら,選択肢に入ってくることも考えられます。
また,KANNのようなDAC内蔵のDAPではなく,iPhoneに外付けDACを接続するという選択肢も出てきますね。いやいや,沼には立ち入るまい…。
さて,ユニバーサルイヤホンを利用すると必ず突き当たるイヤーピース問題。
色々試しましたが,結局は「あれ」になりそうです。
次回はイヤーピースのお話。