不作の春ドラマ
6月に入り、2022年春ドラマも佳境に入ります。
4月当初、今クールのドラマには大いに期待していました。
まずはそれぞれのドラマのキャストが超豪華。キムタク、多部さん、柴咲さん、高橋一生さん等々、そのキャスティングだけで相当視聴率が稼げそうな面々が揃っているのですから。
しかし…。
第1回を観るとその印象は大きく変わりました。
恐らく盛り上がりに欠けるクールになるな…と。
そしてそれが現実になっているのは今クールの視聴率を追っていけばよく分かります。
【速報】2022年春放送中の最新ドラマ視聴率ランキング&一覧!今期観るべき人気ドラマは? | ciatr[シアター]
最終回を前に、今クールの印象をまとめてみたいと思います。
内容 > キャスティング
まずもって、ゴールデン枠で唯一ドラマの内容が優れている…と感じるのがTBS「マイファミリー」です。
ひとつの誘拐事件を皮切りに、次々と誘拐事件が連鎖していきます。
意外な人物が意外な理由で誘拐に関わっていることが中盤以降明かされ、恐らく最終回では更なる大どんでん返しが待っているはず。
それにしてもこの手のミステリーものはTBSの独壇場ですね。
まずもってミステリーの内容が上質ですし、テンポが最高。息つく暇を与えずに謎が謎を呼ぶ展開で失踪します。
日曜劇場枠としては壮大な世界観ではありませんが、この枠独特の水戸黄門的展開のドラマは飽き飽きとしておりますので、私としては好み。
そんな内容で着々と視聴率を上げてきている「マイファミリー」は、総合的なドラマの質で圧倒していると考えます。
逆に、よくここまでコケられたな…と驚くのが「元彼の遺言状」です。
「綾瀬はるか + 大泉洋」のコンビで9%を割り込むなんて…。
私は1回目を観て諦めました。
「マイファミリー」とは逆でテンポが悪すぎる。綾瀬さんがキャンキャン叫んでいるだけのドラマに見えましたので。
無理矢理謎解きに向けさせようとする脚本の質の悪さも極めて目立ちました。プロの方々が制作していて、
「これじゃダメだ!」
と気付かないものなのでしょうか?
それともこれがフジテレビの現実か?
キャストのパワーで何とか乗り切ったのが「未来への10カウント」です。
一時は視聴率が10%を割り、「キムタクも限界か?」と話題になりましたが、それでも終盤の追い込みは見事だと思います。
ドラマの内容は、心配したとおりスポ根根性ものから脱却することができず、薄っぺらいものでした。これで主演が木村さんでなかったら、5〜6%をうろつくような結果になっていたと考えます。
生徒側のありきたりな事情と木村さん演じる桐沢側の事情とを同じ比率で描こうとしたことが内容の平坦さに繋がってしまったかと…。それぞれの「事情」もありきたりで30年前のスポ根ものから脱却できていませんでしたし。
どうせだったら、もっと桐沢側に振り切った描き方でもよかったのでは…と考えます。
「インビジブル」も非常にもどかしいドラマでした。
まずは、あまりに話が現実離れしすぎていて、「ついて行けない」と受け止められているようですね。私もここまで観続けていますが、その意見には同意です。
毎週毎週猟奇的な殺人事件が起き、そこにインビジブルが関わっている…。
もはやサスペンスとも言えない内容で、TBSにしては「やってしまったなあ…」という感想しか出てきません。
柴崎さんをもっと活かして欲しかったなあ…。
逆に、
「内容的に非常に優れていた」
と感じたのは、MBSの深夜枠「明日、私は誰かのカノジョ」です。
5人の女性達の「それぞれの葛藤」を実にシビアに描いた作品。
レンタル彼女編、パパ活編、整形編、ホスト編と、登場人物が入れ替わりながら物語が進んでいきます。
主演は、頬に大きなあざがあることをコンプレックスにもちながら「レンタル彼女」を続ける「雪」を演じる吉川愛さんなのですが、その他の4人の登場人物も負けじと個性を発揮しており、キャストの活かし方、物語の展開・脚本という点で非常に優れているドラマになっています。
深夜枠ならではの、救いようが無く心に澱が溜まっていくような世界観も実に魅力的。
ゴールデン枠では難しいテーマですが、そのゴールデン枠のドラマと比較すると、「やはりドラマは内容で評価される時代」ということを痛感させられる作品です。
夏ドラマの実態も見えて来ています。
しっかりとした内容が下支えとなっている骨太なドラマを期待したいものです。