さて、「Px8 S2」と「Px7 S3」のどちらをとる?
Bowers & Wilkins「Px8 S2」を購入してレビューを重ねております。

「Px8 S2」と「Px7 S3」の間で揺れています。
はっきり言って、音そのものは「Px8 S2」の方が優れています。解像感も上ですし、定位も本当にバッチリ決まっています。
それでも前回述べたように悩み続けているのは、「ボーカル」の特性によるものです。
「Px8 S2」はボーカルものも行けるのですが、中音域がやや引っ込んだ感じがあり、対する「Px7 S3」は耳元で囁くよような歌声を聴くことができるのです。
この部分の「好み」で悩み続けております。
しかし…。
ようやく自分なりの結論を見付けました。それは、両機の性格の違いが自分なりにストンと「落ちた」ためだと考えています。

リスニング系「Px7 S3」、ややモニター寄り「Px8 S2」
なぜ私が、総合力で落ちる「Px7 S3」に惹かれるのか?…。
それは、私が基本的には「モニター的」に分析的に音を聴くよりも、「リスニング的」に雰囲気重視で聴くことが好きだ…ということに起因するものと考えます。
「Px8 S2」は、音の分離・定位ともに非常に素晴らしいです。
ただ、それ故に、
「ボーカルは正面中央のやや上方向から、楽器隊は左右にすっきりと分離して」
鳴らしているのがよく分かります。非常に見通しがいいです。
ただ、これが違和感の基でもありました。あまりにお行儀がよすぎて見えすぎるのです。
実際のライブ会場等では、すべての音が混在して聴こえるでしょう。あまりにも「ボーカルはここ」「楽器はここ」というようなきっちりとした境目はないはずです。
「Px8 S2」はこの境目を感じてしまうのです。
また、お行儀がよすぎるが故に、楽器の数が多くなるような曲、アップテンポな曲では音が混沌とするような場面もありました。
逆に「Px7 S3」は、
「ボーカル帯は耳元で、楽器隊はその後ろで」
というある意味曖昧な配置となります。しかしそれが実際の生々しい雰囲気に繫がるのです。何しろボーカルの聴こえが最高。Px8 S2ほど解像感はありませんが、Px8 S2では逆に解像感が高すぎて不自然にもきこえます。
「Px8 S2よりは解像感が劣る…」とはいうものの、「Px7 S3」の解像感が低いわけでは決してなく、私には「Px8 S2の方が不自然に高すぎる」と感じることが多かった…ということなのだと思います。
楽器の鳴りも、左右きっちり…というわけではありませんが、渾然としているわけではなく、奥行き感をしっかりと出しながら音の分離感もしっかりしているのが「Px7 S3」。そこに不自然さは全くありません。
というわけで、私としては「Px7 S3」の音の方がリスニング的に聴こえます。とても自然で楽しい音、心躍る音です。
「Px8 S2」は、はっきりとモニター的ともいえませんが、「Px7 S3」に比べるとややモニター傾向があり、温かい音ではあるものの、しっかりきっちりと鳴らす方向へと変わりました(前回も書きましたが、初代Px8とは大きく異なる傾向の音になってしまいました。シリーズで考えるとあまり好ましくない変更かも…)。
私にはどうやら、見晴らしがよく、音全体が一体となって聴こえ、何しろボーカルが心地よい「Px7 S3」の方が合っているようです。
おそらくは、殆どの方とは真逆の選択になるのかとは思いますが、これまでの経験を踏まえ、今回は「Px7 S3」をとりたいと考えます。

今後、「Px7 S3」の後継機がより分離感を増したり、「Px8 S2」の後継機がボーカル帯を生き生きと鳴らしたり…という方向性に振ってきたとしたら、それは乗り換えのときかも知れません。
Bowers & Wilkins、やはり魅力的なメーカーです!