「AirPower」が実現できなかった夢を…
iPhone12シリーズの発売を契機に,Appleは「MagSafe」というQi充電マットを発売しました。
iPhone11Proユーザーの私も,「15W」の急速充電はできないものの,「Apple純正のQi充電マット」ということで早速購入。
これまでのサードパーティー製のQi充電マットよりも発熱が少ないという手応えを得て,これまで使用してきました。
この「MagSafe」という考え方,当然Appleは来年以降も使い続けることになるでしょう。
しかし,純正のレザーケースに丸い後が付く…,miniは「15W」の充電に対応していなかった…など,後になってケチがつき始めたのも事実です。
そもそも,Appleが「AirPower」を順調に発売してくれていたら,こんなことにはならなかったはず。恐らく「MagSafe」にしたって,順次Qi充電に切り替えていきたいAppleが,妥協の産物として作り上げたのだと,私は考えています。
そんな折,AirPowerに限りなく近い使い勝手をもったQi充電マットが発売されました。
アメリカではこの夏に先行発売されていたものが,正式に日本の代理店を通して購入できるようになったようです。
その名も「NOMAD Base Station Pro」。
高額でしたが,思わずポチってしまいました。
「AirPower − Apple Watch充電」=「NOMAD Base Station Pro」は成り立つ?
「NOMAD Base Station Pro」は、高品質なApple製品用アクセサリーブランドとして知られるNOMADと,ワイヤレス充電技術「FreePower」をもつairaが共同で開発した。ワイヤレス充電器。
機能的に見れば,「AirPower」の充電方式から「Apple Watch充電」をさっ引いたものと捉えてもいいでしょう。
内部に多数のコイルを有し,マット上のどの位置に置いても,3台までの同時充電が可能なQi充電マットとなっています。
AppleがAirPowerを断念した理由は,
「多重コイルによる発熱を抑えきれなかった」
「Apple Watchの特殊な充電に対応できなかった」
という,二つの要因が大きいと考えられています。
そのうちの「Apple Watch充電」は潔く諦め,その他の機能はAirPowerを踏襲する…というのが基本的な考え方のようですね。
Appleでさえ断念した「多重コイルによる発熱」をどのように回避したのか…。
実は,同じ「多重コイル」とはいえ,その考え方そのものが異なっているようです。
AirPowerは,下の画像のように,充電用のコイルを多層に埋め込み,「充電できるエリアを広げる」という考え方で進んで来ました。しかし,これではコイル同士が干渉して,発熱が抑えきれなかったと思われます。
対して「NOMAD Base Station Pro」に採用されている,「aira」のワイヤレス充電技術「FreePower」は,小さい18個のコイルを多層式ではなく横一面に敷き詰め,
「デバイスをどこに置いても発見し,動的に電力供給をアクティブにして,スイートスポットを作成するパワーコイルマトリックスを構築する」
のだそうです。
つまり,これまでのように固定されたコイルからの電力をそのままデバイスに伝えるというのではなく,デバイスの充電部分をAIが感知し,周辺にある小型コイルが共同して「仮想の電磁場」(スイートスポット)を作成し,充電するからこそ,過度な加熱を防ぐことができる…ということなのです。
もはやQi充電にも「仮想化」の波が及んできた…ということでしょうか?
まあ確かに,この機能が有効に作用するのであれば,固定されたコイルとデバイスの充電スイートスポットとがずれて充電効率が悪くなり,発熱する…という懸念は減ることになります。
何せ,AIが判断して,自由な場所に充電スポットを作り上げる…というのですから。
問題は,本当にこの考え方が有効であり,過度な発熱を抑えたQi充電を行ってくれるか…ということです。
iPhone単独での発熱具合も気になりますし,複数デバイス同時充電時の発熱ぶりも…。
次回から,実際の充電の様子をお伝えしていきます!